表題番号:2013B-084 日付:2014/03/31
研究課題(N+1)次元Einstein方程式の解とその埋め込まれたN次元超曲面の解析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 米田 元
研究成果概要
(N+1)次元のEinstein方程式をN次元超平面の時間発展として解析していくためには,数値解析による手法が不可欠である.数値解析をするためには,連続の方程式であるEinstein方程式を差分方程式に直す必要がある.これには従来ではCrank-Nicolson法やRunge-Kutta法がよく用いられている.しかしこれらは,他の方程式に対して安定的に数値解析可能なように開発された方法であり,Einstein方程式のために開発されたものではない.ある近似の範囲でEinstein方程式が有する性質を仮定して有効性が認められるのみである.具体的にはconstraintが保存するという意味で構造保存の性質を有していない.Einstein方程式の数値解析が必要とされる一般相対論的が支配的な状況では,強い重力場や長時間の時間発展などを扱う.その場合に上記の近似が無意味になり,数値解析をする時の最大の問題となるのはconstraintの破れである.よって,構造保存の差分方程式を開発することは重要である.そこでDiscrete variational Derivative Method(DVDM)という方法を使って,アインシュタイン方程式の差分化を行った.最初にHamiltonian形式である必要があるので,Original Arnowitt-Deser-Misner形式をベースにした.DVDMを用いる例としては,2階微分を含む非線形の方程式では例がないので,それらの扱いを可能にする工夫を要した.その結果,構造保存の性質を持った差分化に成功した.数値解析によりその有効性を実験的に確かめた.また,同様なことをマクスウェルの方程式についても行い,従来の差分方程式と今回作成した差分方程式の違いを明瞭にした.これらの結果を応用数理学会(JSIAM),日本数学会(JMS),一般素体論と重力研究会(JGRG)において発表した.(発表は連携研究者の土屋拓也氏.)また結果をまとめたものを論文投稿中である.