表題番号:2013B-081 日付:2014/04/03
研究課題超小型航空機の境界層フィードバック制御による摩擦抵抗軽減の可能性
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 准教授 手塚 亜聖
研究成果概要
超小型飛行機(MAV)に相当する低レイノルズ数において、迎角のある厚翼の揚力係数は、ほぼゼロ、もしくは負となり、空力性能が悪化することが知られている。平行流の場合、層流剥離は不安定であり振動を生じるが、低レイノルズ数の厚翼では層流剥離が安定化して流れが振動せず後縁で再付着しないことが、空力性能悪化の原因と考えられている。プラズマアクチュエータによる人為的な擾乱により流れの再付着を促進できれば揚力係数の向上につながり、層流状態を長く保つことが可能であれば摩擦抵抗軽減が期待される。プラズマアクチュエータの一定のバースト周波数による駆動とは異なる新たな駆動方法を採用することで、バースト駆動では見られなかった新たな流れ場を作り出す可能性が考えられる。本研究では、熱線流速計による非定常流速計測で得られた変動流をトリガーとし、プラズマアクチュエータをフィードバック駆動を試みた。
NACA0012翼型を用い、翼弦長と一様流速を代表長さとしたRe数が50000、迎角αが0.5°<=α<=2.5°の範囲にて、プラズマアクチュエータを、非駆動、バースト駆動、フィードバック駆動の3つの条件で揚力係数の比較を行った。0.5°<=α<=1.0°では、非駆動に比べてバースト駆動の方が揚力係数は大きくなるが、フィードバック駆動でも同程度の揚力係数となった。α =1.0°では、非駆動もバースト駆動も揚力係数は同程度であるが、フィードバック駆動では揚力係数は大きくなった。1.5<=α<=2.5°では、非駆動に比べてバースト駆動の方が揚力係数小さくなるが、フィードバック駆動では非駆動に比べて揚力係数は大きくなった。
このように、上記の迎角範囲において、フィードバック駆動は、非駆動もしくはバースト駆動に比べ、揚力係数が向上した。
後縁剥離流れの可視化を行ったところ、フィードバック駆動では,バースト駆動で観察された渦の下流への対流は確認されず、翼面に付着したまま流れているように見える可視化結果を得た。このような流れが形成されることにより、フィードバック駆動では揚力係数が向上したと考えられる。ただし、どのような流れ場が形成されているのか、といった物理現象の詳細を明らかにするためには、更なる状況の解明が必要である。もし層流に近い速度分布になっているのであれば、摩擦抵抗軽減効果が示唆される。今後は、デジタル一眼カメラを更新して、流れの可視化画像をより鮮明に捉えることで、流れの変化を解明していくとともに、新たな熱線流速計を用意して速度分布を計測することにより、摩擦抵抗軽減効果も明らかにしていく予定である。