表題番号:2013B-077 日付:2014/04/06
研究課題ものづくり企業における原価企画の機能回復の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 商学学術院 教授 清水 信匡
研究成果概要
本研究の当初の目的は次のものであった。
「(1)日本のものづくり企業(製造企業)へのアンケート調査を行うことによって、原価企画の機能不全の要因や特徴を、原価企画が機能している健全企業と比較して、実証的に明らかにするとともに、(2)原価企画の機能不全企業へのインタビュー調査を行うことによって機能不全のメカニズムを明らかにし、機能回復プロセスの糸口を探ることである。かつて原価企画は、日本的コストマネジメントの代表であり、日本のものづくり企業のコスト競争優位性をもたらすと言われていた。しかしながら、最近、多くの日本のものづくり企業において原価企画が機能不全に陥っている。そこで、本研究では、ものづくり企業に焦点を絞り、そこで原価企画の機能不全の原因を明らかにするとともに、機能回復への処方箋を探り出すことを目的とする。」
 この目的は、日本企業の原価企画が機能不全に陥っていることを前提に、その原因をつきとめることにあったが、このテーマで企業を調査することはかなりの困難を伴うおそれがあるので、当初の目的を本年度の科研Bの申請のために以下のように変えた。
「日本企業の活動の「グローバル化」や「グローカル化」が急激に進展する中、日本的なコストマネジメントである原価企画は大きな変貌を遂げている。にもかかわらず、これまでの原価企画研究は伝統的な国内型の企業モデルを前提とし、原価企画をグローバル化・グローカル化したものとしてとらえきれていない。そこで本研究では、わが国の製造業における原価企画のグローバル化やグローカル化の程度、そこでの影響要因と関連要因、および、分散化した原価企画を再統合する仕組みについて、その実態を経験的に調査し、これまで画一的に検討されてきた原価企画を今日の企業実態が反映するかたちで明らかにすることを目的とする。そして、本研究から得られた研究成果を管理会計研究や実務に提供し、わが国製造業の復活の一助としたい。」
 さらに、本研究で行う原価企画研究の予備的考察のために、本年度において以下の研究を行った。
 事業戦略と資本予算プロセス(設備投資マネジメント)との整合性が企業業績にどのように影響しているかを実証的に分析した。全体として、戦略とマネジメントの整合性が成果変数である財務業績に結びつくことが明らかになった。特に、防衛型と探索型に整合的な設備投資マネジメントを行うことがそれらの企業の業績向上に結びつくことが明らかになった。本研究では、防衛型と探索型に整合的な設備投資マネジメントを行うことがそれらの企業の業績向上に結びつくことを明らかにした。とくに、本報告の貢献は、成果変数として企業の財務業績を利用して、戦略とマネジメントの整合性が成果変数である財務業績に結びつくことを明らかにしたことである。