表題番号:2013B-075 日付:2014/04/15
研究課題知識時代のイノベーティブ人材発見、育成、活用システムの構築
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 商学学術院 教授 東出 浩教
研究成果概要
 本年度の研究においても、いわゆる知能指数という概念を超えた「知能」というコンセプトを拡張し、ビジネスというコンテクストにおけるアプリケショーンを目指してきた。
 具体的には、これまで研究を続けてきた多重知能というコンセプトに、CQ(Cultural intelligence:文化知能指数)というコンセプトを測定可能な形で組み込むことにより、現在急速に進むグローバル化という環境の中で、より実務的に価値の高い「知能」の日本語環境での測定セットを開発した。
 具体的な開発プロセスは、以下の通り。
 1.国内外の関連文献を必要十分な形でレビュー。
 2.CQの具体的な開発者である、ナンヤン工科大学のProf.Ann、そしてUSのDr.Livermore、の両研究者とコンタクトをとりながら協力を得、これまでの研究や様々な英語環境でのデータの提供を受け、今回の研究に反映。
 3.ダブルバックトランスレーションのプロセスを経て、測定インストルメントを日本語化。
 4.海外駐在者、海外駐在経験者、頻繁に1週間以上の海外出張を行う方から538人をサンプリングし、質問票による調査を行った。
 5.得られた数量的データを元に、記述統計および多変量解析(主に主成分分析と信頼性分析)を通じて信頼性のチェックと、海外でのこれまでのデータとの比較を行った。
 
 結果としては、実務に使用する為の最低限の信頼性は、日本語版においても確保できた一方で、これまで世界各国で蓄積されてきたデータとの比較では、信頼性は相対的に低いものになっていると判断できる。この発見は、Hofstedeらの各国の文化比較のこれまでの結果からみれば驚くものではない。しかし、これまでの東出研究室が開発してきた様々な心理学系、組織学系の測定インストルメントが、一般に海外での信頼性のレベルと同等のものを一貫して達成してきた事実に比べると、今後グローバル化というコンテクストで何らかの測定インストルメントを日本というコンテクストへ導入するにあたっては、より注意深いプロセス経てvalidationを行っていく必要があると判断できる。
 また、今回の調査対象者が日本においては、相対的に海外経験が多い人たちを対象としているにもかかわらず、CQの各サブ・ディメンションにおける平均値は、ミシガン州立大学そしてナンヤン工科大学が提示する世界基準値に比べ著しく低いことが判明した。従い、日本人一般を対象にすると仮定すれば、より一層低い値が得られる事が強く推測され、グローバル時代における日本人の人材面の課題を、本調査は明確に指摘していると考えられる。
 本研究結果は、現在研究協力者と共に論文として投稿するための準備を進めている。

以上