表題番号:2013B-074 日付:2014/04/11
研究課題エコシステム論をキーとしたプラットフォーム論のさらなる発展
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 商学学術院 教授 根来 龍之
研究成果概要
 本年度は、一つの著書、一つの国際学会発表、一つの論文として研究成果を発表した。

 著書(監修)『プラットフォームビジネス最前線』では、第1章と第2章4節を執筆すると同時に、本書籍の中心となる第3章「分野別の最新動向と成長戦略」の調査方針と内容調整を特に行った。
 本書では、プラットフォームビジネスの新しい定義と分類をまず行い、次に関連動向との関連について論じている。さらに、日本におけるプラットフォームビジネスの分野別の最新トレンドと動向を詳らかにするとともに、プラットフォーマーの今後の成長戦略と、プラットフォームを利用するユーザー企業の利用戦略に関するアンケート調査結果も収録している。
 本書におけるプラットフォームビジネスの日常用語による定義は、「他のプレイヤー(企業、消費者等)が提供する製品・サービス・情報と一緒になって、初めて価値を持つ製品・サービス」となっている。また、アカデミックな定義は、「その製品・サービスを前提にして利用できる他の製品/サービス/情報(補完製品・補完情報等)が存在し、ユーザーが補完製品・補完情報等の多様な選択を直接行なえるようにしている製品・サービス」とされている。
 Annual Meeting of the Academy of Managementでの研究発表(単著)「Changing the Strategic Viewpoint to adapt the digitalization: from Value Chain Strategy to Layer Strategy」では、ネット化、モジュール化、ソフトウェア化などを背景とする産業のモジュール化の進展により、最終消費者の取引相手が誰かという観点から見た産業構造が従来の「バリューチェーン型」から、「レイヤー型」へと変化し始めているとまず主張した。その上で、レイヤー型産業構造に適応するための戦略をプラットフォーム戦略と呼び、両者の戦略課題に違いについて、バリューチェーン型への適応戦略との対比を行った。また、上流(下流)統合と階層統合の効果の違い、取引のオープン化(企業グループ化)と隣接階層へのオープン化(統合化)の効果の違いについての議論を行った。
 Negoro and Kamaike論文「Strategy for Parallel Platforms」は、複数のエコシステムからなる製品システムを、パラレルプラットフォーム市場と呼び、その市場特有の戦略的観点について事例を示しながら論じている。そのポイントは以下の5つとして整理される。(1)ネットワーク効果のマネジメント、(2)利益格差のマネジメント、(3)セットとしてのプラットフォーム製品のマネジメント,(4)結合プラットフォームのマネジメント、(5)マルチホーミングのマネジメント。