表題番号:2013B-062 日付:2014/03/12
研究課題パーキンソン患者家族における病状理解度と介護負担感との関係
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育・総合科学学術院 教授 堀 正士
研究成果概要
【目的】
 研究者は進行性神経難病であるパーキンソン病患者の患者会の活動を通じて,パーキンソン病患者の家族の介護負担感には,患者の重症度以外にも影響を与えるものがあることを感じた。これを元に、患者および介護家族の病状理解度が介護家族自身の介護負担感や抑うつ度に関してどのように影響しているか,そこに患者の重症度の関与は認められるかなどについて明らかにすることが目的である。
【調査対象者と実施方法】
 首都圏のパーキンソン病友の会の会員の患者・介護家族を対象とした。調査票を個別に会員に郵送し,これを同じ封筒で郵送にて回収した。回答は無記名とし,833名の会員に2013年5月末に送付し,同年7月初旬までに335通の回答を得た(回収率:40.2%)。
【研究方法】
 回答を患者・家族ごとに番号付けし,適正に回答されているものだけを抽出した結果,95件(対回収件数:28.3%)のデータを利用した。そのうち,男性患者・女性介護者(以下タイプ1)のデータは54件,女性患者・男性介護者(以下タイプ2)のデータは41件であった。これらのデータの統計値(平均値や標準偏差)を把握し,さらに相関分析やパス解析を行った。統計処理には統計解析ソフトウェア(IBM SPSS Statistics 21)を用いた。
【結果および考察】
1)介護負担感とその他の要因との関係
 患者による薬の種類・名前に関する知識が介護負担感を改善する要因となっていた。また,患者の重症度が上がると,介護負担感が増すという結果が得られた。
2)介護者の抑うつ度,介護負担感とその他の要因との関係
 介護者による薬の効果の知識が増せば,介護者の抑うつ度が減るという結果を得た。これは,新しい知見である。また介護者の抑うつ度が増せば,介護負担感が増すという結果が得られた。つまり,介護者による薬の効果に関する知識が増せば,介護者の抑うつ度が減り,介護負担感が減るということが推察されるが,直接的なパスは引けなかった。
3)患者の抑うつ度とその他の要因との関係
 患者の抑うつ度に与える影響要因は,タイプ1では,表れていない。タイプ2では,患者による患者自身の症状の理解・知識が上がると,また,長期間服薬しているとその効果が効かなくなる状態・症状(ウェアリング・オフ)に関する介護者の知識が上がると患者の抑うつ度が下がるという結果となった。一方,患者の重症度が増せば,患者の抑うつ度が増すという結果がでた。つまり,重症度が上がれば患者の抑うつ度が上がるが,患者による患者自身の症状の知識,介護者によるウェアリング・オフの知識が上がれば,患者の抑うつ度を減らすことができると推察された。
【結論】
 以上の結果から、患者による患者自身の症状の理解や,介護者による薬の効果やウェアリング・オフの知識というような病状理解度が上がれば,患者の抑うつ度,介護者の抑うつ度を改善することができると考えられる。主治医がこのことを理解し,不安軽減のための適切な心理教育などの対応を患者本人のみならず介護家族にも行うことが重要である。