表題番号:2013B-056 日付:2014/04/11
研究課題スポンジモデル検証を基礎とする両生類の血球産生調節の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育・総合科学学術院 教授 加藤 尚志
研究成果概要
本研究の最終目標は,動物における血球や血球産生(造血)の仕組みの多様性と普遍性を明らかにすることである。血球産生(造血)は,脊椎動物に共通した生命機構であり,地球上の様々な動物の多様性と普遍性の探求のすぐれた題材である。酸素運搬を担う赤血球,生体防御を担う白血球,止血血栓形成を担う栓球(哺乳類の脱核した血小板も栓球に含まれる)のそれぞれは,いずれも造血幹細胞を源とする細胞である。
本研究期間では,両生類(アフリカツメガエル;Xenopus laevis,以後ツメガエル)の造血を精査するために,血球関連分子と抗体の作出/赤血球造血因子エリスロポエチン(EPO)定量系/in vitro及び in vivoモデル確立など,各種の予備検討を進めた。ツメガエル赤血球造血器の肝臓には,ヒトやマウスに比較して1細胞あたりのEPO受容体数が圧倒的に多いと考えられ,この結果,過剰のEPO受容体がフリーのEPOを吸着し,赤血球産生量を決定する造血因子量を規定している可能性がある(スポンジモデル)。このことを実験的に検証するためには,様々な生物学的実験資源の調製が必要になる。その中でも,赤血球系細胞を特異的に検出するモノクローナル抗体と,EPO受容体を認識するモノクローナル抗体(xlEPOR MoAb)を作出することができた。特に後者に関しては,抗原免疫マウス脾臓とミエローマ細胞を融合させて得た約3000クローンのハイブリドーマの中から,本研究に有益を考えられる4クローンを選別した。それぞれのクローンが産生するモノクローナル抗体の化学的性質を精査し,さらにツメガエル肝臓,末梢赤血球,ツメガエルEPO受容体強制発現ヒト白血病細胞株などのEPO受容体に関して,免疫染色像,フローダイトグラムを検討することができた。今後,さらに獲得抗体の抗原特異性,細胞認識特異性,結合特異性を調べ,ツメガエル造血系解析に積極的に利用展開する。