表題番号:2013B-053 日付:2014/04/08
研究課題ハエトリソウの全ゲノム配列解析から解く食虫植物進化の分子機構
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育・総合科学学術院 教授 大山 隆
研究成果概要
 食虫植物は世界中に約600種存在し、我が国にも20種ほどが自生している。一般にこれらの植物は、窒素・リンなどが不足した環境を自生地としており、特殊な葉や根を用いて昆虫などの小動物を捕らえて消化・吸収することで、環境に適応している。我々は、生物形態・機能の進化と遺伝子機能の進化の関係に興味をもち、食虫植物の研究を行ってきた。これまでに、Drosera adelae(和名:ツルギバモウセンゴケ)、Dionaea muscipula(ハエトリソウ)、Cephalotus follicularis(フクロユキノシタ)が、S-like リボヌクレアーゼ(RNase)を消化液中に大量に含むことを発見していた(Okabe et al., 2005; Nishimura et al., 2013)。本研究課題では、通常の植物が食虫植物に進化してきた過程で、どのような遺伝子が関与したかを解明することを目的としている。しかし、今回の助成額と期間でこの研究を実施することは無理なので、Aldrovanda vesiculosa(ムジナモ), Nepenthes bicalcarata(ウツボカズラの一種)、Sarracenia leucophylla(アミメヘイシソウ)を新たに加えた6種の食虫植物のS-like RNaseの構造解析、ならびにそれらと非食虫植物のS-like RNaseの比較構造解析を行った。その結果、食虫植物のS-like RNaseだけに保存されたアミノ酸残基と非食虫植物のS-like RNaseだけに保存されたアミノ酸残基が存在すること、さらに、植物における系統関係を超えて、食虫植物のS-like RNaseがひとつの類縁グループを形成することが明らかになった。また、クラスIのS-like RNaseの場合、植物の進化上の近さよりも機能的相同性の方がより強く酵素の構造に反映していることが明らかになった。