表題番号:2013B-052 日付:2014/04/22
研究課題高頻度組換え部位形成の分子基盤の解明
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育・総合科学学術院 教授 大山 隆
研究成果概要
 遺伝情報に関するこれまでの常識は、『遺伝情報は核酸塩基の配列として符号化されている』というものであった。しかし近年、この常識が“改訂”され始めた。DNAの高次構造や物理的特性にも遺伝情報が“印”されていることが明らかになってきたからである。近年、このような“高次”の遺伝情報は、クロマチンの構築や遺伝子発現制御など、様々な現象に関与していることが明らかになってきた。本研究では、減数分裂時において高頻度組換え部位が形成される際に使われていると推察される高次遺伝情報の実体を解明するために行われた。
 減数分裂時の高頻度組換え部位に共通したコンセンサス配列は存在しないことが分かっている。従って、組換え部位を指定する情報が塩基配列の並びとしてではなく、それ以外の形をとってゲノムに印されている可能性が高い。しかし、その情報の実体は未だに解明されていない。Chenらは高頻度組換え部位の形成にはDNAの構造特性が関与していると主張しているが、それがどのような特性であるかについては解明できていない(Nucleic Acids Res. 41, e68, 2013)。因みに彼らが開発した、塩基配列から高頻度組換え部位か否かを判定するプログラムは、高頻度組換え部位以外の領域に対しても70%以上の確率で高頻度組換え部位であるという判定をしてしまう。そこで本研究では、出芽酵母とマウスの各ゲノムクロマチン内で組換え部位が決定される情報基盤を解明する目的でDNAの構造特性の解析を進めた。まず、二本鎖DNAの崩壊エネルギー(duplex disruption energy: DDE)を2 bp単位の高分解能で解析できるコンピュータプログラムMIUdde.ver12を開発した。これを用いて、出芽酵母とマウスのゲノムワイドのDDEマップを作成した。その結果、減数分裂時に形成される高頻度組換え部位のDDEが異常に高いことが明らかになった。