表題番号:2013B-042 日付:2014/03/27
研究課題質感認知と選好形成に影響を及ぼす社会的要因の検討
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 教授 竹村 和久
研究成果概要
 本研究では、これまであまり扱われていなかった、選択行為、所有行為、社会的交換、社会的文脈情報などの社会的要因が質感認知にどのように影響をするかを明らかにしようとした。特に、質的面接やヒアリング法を用いた社会調査や、眼球運動測定装置と情報モニタリング法などの過程追跡技法を用いて、連続する選択行為が、対象への選好と質感認知に及ぼす効果を検討した。この研究では、2つの選択肢に対する大小判断課題を行った後に、好ましい対象物の選択という選好課題と質感認知判断課題を行った。本研究では、これまであまり扱われていなかった社会的要因に焦点を当てて、この要因の質的認知に及ぼす効果を検討し、芸術や工芸をはじめ、衣食住などの社会的、文化的側面に質感認知がどのようにかかわるか、また、選好形成にどのように係わるかを明らかにした。 
 質的認知の研究は、多様な側面を持っており、いろいろな歴史資料館、公文書館、博物館などでの質的表現と認知についての調査やヒアリングをまず行った。また、質的認知における実験では、実験時の眼球運動および選好反応を測定した。実験研究では、好ましさや価値に直接的な結びつきが無いと考えられる選択が、後続する選好判断や対象の質感認知に影響を与えるか、また、どのような影響を与えるかを分析した。この研究では、2つの選択肢に対する大小判断課題(以下,知覚判断課題)を行った後に、好ましい対象物の選択という選好課題を行う。知覚判断課題で多数回選択を行った対象刺激の選好課題での選択率およびその質感認知を分析した。さらに、知覚判断課題を通し、特定の刺激が提示されたらボタン押しによって選択を行うといった、刺激と選択行動とのマッチングを学習し,多選択ターゲットへの選好が変容していない可能性があるので、本実験研究では、同一の知覚判断課題によって選好と無関連な選択の操作を行い,選好の測定課題に‘嫌いな対象物の選択課題’を用いても実験を行う。知覚判断課題によって多選択ターゲットの選好が上昇すると仮定した場合,‘嫌いな’対象物の選択課題では、また、その多選択ターゲットの選択率が低下することが予想され、実験結果はその予想を支持した。
 質感認知は、様々な心理的要因のもとでの価値判断的側面をもっているが、社会的要因の操作は、注意に影響して、それが選好判断や質感認知に影響を与えると考える。我々が開発した状況依存的焦点モデル(竹村,1994, Fujii,& Takemura,2002)をもとに仮定により、質的認知の理論的考察も行った。
 本研究では、質感認知も質感認知も、視覚的、触覚的、味覚的側面の多角性を持って検討し、選好については、好悪や価値判断を含めた形の多角的な検討を行った。本研究を通じ、質感認知が関係する芸術や工芸をはじめ、衣食住などの社会的、文化的側面に質感認知がかかわることが示唆された。