表題番号:2013B-021 日付:2014/03/20
研究課題経済規制・監督手法の変動と、それによる行政法体系への影響と再構築
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学学術院 教授 田村 達久
(連携研究者) 法学学術院 教授 首藤 重幸
(連携研究者) 法学学術院 教授 岡田 正則
研究成果概要
とりわけドイツやフランスに見られる「経済行政法」という学問体系が日本においても独立した学問体系として成立しうるか、成立させる意義があるかに研究の主たる関心を持ちつつ、それとの比較法的研究を通じた日本経済行政法理論の基礎的研究を進めることとした。ドイツ経済行政法・公経済法の講学体系の検討から着手し、その体系書の検討を行うことを通じて、本研究課題にアプローチすることとした。さしあたっての到達点の概要は次の3点に纏めうる。①ドイツにおいて das besonderes Verwaltungsrecht という科目類型の分類範疇に包括される個別法は、共通化されており、経済行政法の科目もその中に含まれている。経済行政法は、大学における法学学修課程における重点科目(Schwerpunktbereich)となっている(Rolf Stober, Allgemeines Wirtschaftsverwaltungsrecht, 17. Auflage, 2011, S.1)。また、ドイツ連邦共和国は、いうまでもなく、フランス共和国とともに、ヨーロッパ共同体(EC)の原始加盟国であり、ヨーロッパ連合(EU)の主要構成国であることから、ヨーロッパ域内市場の統一を当然の前提とすることになるため、経済行政法を講じるに当たっても、必然的、かつ、不可避的に、関係するヨーロッパ連合法(EU-Unionsrecht)の法制度等への言及、叙述がなされることになり、実際にそのようになっている。②経済行政法に関する学問研究を行うに際して参照されることになる中核的な個別法律として、ドイツ国内法としては、営業法(die Gewerbeordnung)がそれであり、ヨーロッパ連合法との関係では、ヨーロッパ連合支援法規(EU-Beihilfsrecht)がそれであることが明確である。そして、それらを中心として、関連諸法が研究され、体系づけられている。③いわゆる(一般)行政法(das allgemeines Verwaltungsrecht)との関係については、行政行為の理論が経済行政法制に一般的、典型的に見られる監督措置や規整(Regulierung)の法的統制を考察する際に、また、行政行為の職権取消と撤回に関する理論が公経済法の一つと考えられている補助金法・支援法(Subventions- und Beihilferecht)の検討において、それぞれ重要となっているといったように、それら一般行政法理論(日本行政法学流にいえば、行政法総論)が経済行政法学の体系化に当たってもやはりその中核をなしているということが明確となった。このような到達点を一つの基礎としつつ、平成26年度の科研費の基盤研究(B)の申請を行った。そして、その後、本研究遂行の母体となっている早稲田行政法研究会において、我々の研究組織には属していない学外の研究者であって、問題意識を基本的に同じくしつつも、我々とは別個独立して日本経済行政法学の体系化について研究を進めている学者から、その研究過程・成果の一端の報告を受け、問題意識の共有化と学術面での有意義な意見交換をすることができ、このことから我々の今後の研究の方針・進め方をさらに固める上で重要なヒントを得ることができた。