表題番号:2013B-017 日付:2014/03/29
研究課題触法障害者・高齢者の矯正施設出所後の福祉的支援のあり方に関する学際的国際比較研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学学術院 教授 菊池 馨実
研究成果概要
 矯正施設出所後の障害者・高齢者の福祉的支援をめぐっては、政府では法務省、学界では刑事政策を中心としたアプローチがなされてきた。これに対し、最近、厚生労働省の地域生活定着支援事業がスタートし、社会福祉の視点からのアプローチが本格化している。こうした動きに対して、社会保障法や成年後見法をはじめとして、学問的にも多角的に検討する必要性が増しているにもかかわらず、研究はまだほとんどなされていない。こうした現状に鑑み、採択者は2013年度日本学術振興会科学研究費を申請し、採択に至らなかったものの、早稲田大学特定課題研究助成費を得ることができた。
 研究助成費を得ての本年度の採択者の活動としては、各地の地域生活定着支援センターの実情を把握するとの観点から、各県センターでのヒアリングを中心に行った。その上で、そうした実情と政策との整合性を図り、同時に多様な研究分野にわたる研究者との対話を図るとの観点から、2014年3月17日、早稲田大学にて特別研究会「触法障害者・高齢者の地域生活定着支援をめぐる現状と課題」を開催した。そこでは、厚生労働省において同事業を担当する梶川一成氏(厚生労働省社会・援護局総務課課長補佐)を招き、同事業の現状と課題についてのご報告をいただくとともに、障害者の権利擁護活動に長取り組んでこられた大石剛一郎弁護士、地域生活定着支援センターで特色ある取組みをされておられる関口清美氏(栃木県地域生活定着支援センター長)、益子千枝氏(兵庫県地域生活定着支援センター相談員)、高橋恵理香氏(宮城県地域生活定着支援センター相談員)による実践報告をお願いした。さらにこれを踏まえて、研究者サイドから、上山泰(新潟大学・民法・成年後見法)、宍倉悠太(国士舘大学・刑事政策)、菊池馨実(早稲田大学・社会保障法)の3名がコメントを行った後、参加者の間で自由にディスカッションを行い、触法障害者・高齢者の地域生活定着支援をめぐる議論を深めることができた。ここでの交流は、今後の人的ネットワークの拡大にも資するものと思われる。