表題番号:2013B-016
日付:2014/04/11
研究課題少数派株主締出し法制に関する比較法研究
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 法学学術院 | 教授 | 尾崎 安央 |
- 研究成果概要
- 本研究課題は、当初、科研費共同研究として構想されたものであった。したがって、特定課題研究Bとしてご採択いただいた2013年度においては、本学専任教員である尾崎と福島法務研究科教授とを共同研究者とする研究体制を組みつつも、当初構想した共同研究者との連携を保ちつつ、当初計画に基本的に従った研究活動を行った。その内容としては、費用の点で海外での調査活動は難しいと判断し、国内での研究活動、及びその成果の共有を図ることを中心とした。
そのうち、具体的成果が得られたのは、連携を取ってきた学外の先生の研究課題である。これは、当初計画においても、初年度において成果が得られるであろうと考えていた課題であり、共同研究者としては、その点に集中することに意義があると考え、優先的に共同研究を進めた結果であるといえる。
一つは、北欧法制における支配株主の状況とその支配権の濫用的行使の可能性に対する法制度の在り方を検討したものである。本研究は、共同研究者により開催された当初の研究グループによる研究会で報告され、その成果を共同研究者等において共有することとともに、研究会で活発な意見交換を行った。もう一つは、米国の株式買取請求に係る州法の状況を取り上げた成果であり、ともすればデラウェア州法をめぐる判例理論ばかりに集中する日米の傾向に対して、模範法州の問題を取り上げて、日本法での議論への示唆を提供するものである。これも研究会報告をし、意見交換などを行った。
いずれも、近日中に、他大学の学内紀要において公表されるものであり、その意味では、本研究共同研究者の成果とは言い難いものであるが、この特定課題採択の事情や趣旨を踏まえるならば、その補助の成果とすることに躊躇する必要はないと考えた次第である。この2本の論文の公表をもって、少数派株主の締め出し法制の研究として当初計画の初年度に予定した成果が十分に得られたと考える。
当初計画の2年目以降に考えていたものが、2014年以降で取り上げられることとなる。もっとも、2014年度科研費申請においては、前年度不採択となった課題には新たな構想を加味しなければならないと考えたことから、その申請は見送った。というのは、共同研究グループにとって本課題はきわめて重要なものであると考えており、そのままの形で取り上げても十分な意義を有するものと考えたからである。特段に加味する必要はないという判断である。当初計画からは未解決の課題である、たとえば独仏の議論はすでにいくつか紹介がなされている。しかし、共同研究者はなお不十分なものがあると考えており、特に財産権の保障など憲法問題については、独仏だけでなく、米国でも議論があるようであり、その研究の必要性はいささかも減じられていないと考えている。