表題番号:2013B-006 日付:2014/04/04
研究課題貨幣を考慮に入れた生産関数の下での利子率決定金融政策及び均衡予算の帰結
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学術院 准教授 金子 昭彦
研究成果概要
本研究では,政府がある一定の支出を包括的所得税,資本課税もしくは貨幣発行収入で賄おうとしている状況を考えている.経済主体の貨幣保有動機は,貨幣が生産に関わる取引コストを減じることに由来しており,具体的にはmoney-in-the-production-function(貨幣を考慮に入れた生産関数)を利用している.代替的な調達手段を動学マクロモデルの中で比較検討する論文は,貨幣動学モデルに限れば,cash-in-advance model を利用したPalivos, T., & Yip, C. (1995). “Government Expenditure Financing in an Endogenous Growth Model: A Comparison.” Journal of Money, Credit, and Banking, 27(4), 1159–1178.に由来する.その後,数々の関連論文が執筆されたが,我々のように貨幣を考慮に入れた生産関数を使って分析はなかった.

モデルの骨格としては,消費者側としては代表的個人モデルを考え,生産側としては物的資本と貨幣を生産要素とした内生成長モデルを使っている.

我々は,まず包括的所得税と貨幣発行収入のみが可能な状況で,成長率最大化政策を考えた.この状況の下では,どのような政府支出であってもすべてを包括的所得税ですべて賄うことが成長率を最大化させることが分かった.一方,資本課税と貨幣発行収入を比べたときには,成長率を最大化させる最適な祖組み合わせが存在する.その理由としては,資本課税が直接資本蓄積を阻害すし成長率も急激に低下させるため支出の一部を貨幣発行収入で賄う方がよいが,包括的所得税は資本の収益に課税をすることにより,間接的に資本蓄積を阻害するに過ぎないのですべての支出を包括的所得税で賄っても良いということである.また,我々のモデルには移行過程がなく,政策の変更があれば瞬時に新しい均衡に移るため,成長率最大化政策において厚生最大化が実現されている.