表題番号:2013A-945 日付:2014/03/27
研究課題反動を伴う跳躍に対する練習・トレーニングの効果とそのメカニズム
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) スポーツ科学学術院 講師(任期付) 平山 邦明
研究成果概要
 反動を伴わない運動に比べ、反動を伴う運動ではより高い運動パフォーマンス(例:ジャンプ高)が発揮されること(反動効果)が広く知られている。反動効果のメカニズムは複数あり、運動様式や運動強度などによって貢献度が異なることが報告されている。これまでに、地面に接した状態から抜重することで比較的低い強度の反動をつけておこなうジャンプについては、筋活動のタイミングが変化し腱のバネ作用がより強調されることでジャンプパフォーマンスが改善されることが明らかにされている。一方、ある高さから落下し、その勢いを反動にする強度の高い反動運動においては、練習効果のメカニズムが異なる可能性がある。そこで本研究では、ドロップジャンプを対象に、1セッションの練習効果のメカニズムを神経筋活動等の観点から明らかにすることを目的とした。
 被験者に十分なウォーミングアップを行わせた後、最大等尺性底屈トルク発揮および足関節のみを用いたドロップジャンプを行わせ、床反力の力積、足関節角度、下腿各筋の神経筋活動を定量した(事前測定)。同様の測定を15分の安静を挟んでもう一度行った後(中間測定)、ドロップジャンプを10回×3セット練習させ、引き続き事前測定と同様の測定(事後測定)を行った。
 一部の被験者のデータに欠損が生じたため、統計処理を行うまでに至っていないが、ジャンプパフォーマンスの指標とした力積は概ね増加していた。このとき、最大等尺性底屈トルクには変化がなかったことから、力積の増加はウォームアップ等の効果ではなく、練習効果によるものであると考えられた。床反力の最大値は、ほとんどの被験者で増加が見られた。背屈・底屈可動域には大きな変化がなかったものの、背屈(ブレーキ)動作の速度は遅くなり、底屈(推進)動作の速度は速くなる傾向にあった。主働筋である下腿三頭筋の背屈動作時の神経筋活動は、いずれの被験者でも増加していた。一方、底屈局面においては、個人差が大きく、平均値としてはほとんど変化が見られなかった。背屈動作中の神経筋活動の増加が、背屈動作中の床反力の増加をもたらし、力積の増加に寄与したと考えられる。また、背屈動作中の力発揮の結果生じる最大床反力の増加は、底屈動作中の力積の増加に寄与した可能性が高い。今後、追加実験や詳細な分析を行い、明確な結論を得ていく予定である。