表題番号:2013A-936 日付:2014/04/07
研究課題独居高齢者の生活状況を評価する機能を有する住居構造に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 准教授 加藤 麻樹
研究成果概要
 遠隔地に居住する家族の生活状況をモニタリングは高齢社会においてニーズが高い.本研究では,日常生活のリズムを定量化する手法を構築することを目的とする研究を行った.長野市西部の中条地区の農家の協力を得て,特に住居の建具および家具に着目し,外出時に使用する頻度が高い縁側の出入り口と,冷蔵庫の扉に加速度計をとりつけた.2013年9月より2014年2月まで継続的に測定を行い,その変動波形に対する解析を行った.
 出入り口の測定では,人の移動が多いことから,開閉動作だけでなく,人の通過により生じる振動も敏感に反応するため,活動量を評価するのに適している.ただ9月頃の暑い時期と1月,2月等の寒い時期とでは扉の開閉頻度が異なる.冷房設備がないことから,夏季は出入り口の扉は開けたままにされ,冬季は出入りするたびに開閉を伴うことから,日常生活の季節間変動があると推察される.また,居住者や来客等の区別は困難であるが,活動があること自体が日常的なことであり,これを定量的に示すことが可能となった.一方で午前0時近辺より朝4時くらいまでは振動が計測されず,睡眠時間帯であると推察できる.
 家具として用いた冷蔵庫の扉については,6時前後,12時前後,19時前後に振動発生頻度が高い.これはつまり食事の時間帯にほぼ恒常的に冷蔵庫を用いていることを示している.出入り口の場合が比較的ランダムな人の出入りを測定しているのに対して,冷蔵庫の場合は夫婦のうち,妻の側が使用する頻度が高く,その日常的な使用状況から,特定の対象者の日常生活のリズムを示す指標として有効であることが示された。この点からは,居住者が複数名いる場合,個別の生活状況を評価するためには,居住者個人の行動特性を明確化させることが望ましい.
 今後,継続的な測定により年間を通じた特性の抽出をすることで,通年で用いることができる,定量的な日常生活リズムの評価ができると思われる.