表題番号:2013A-920 日付:2014/04/13
研究課題内燃エンジンのオイルリング周り潤滑油挙動に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 助手 菊原 浩司
研究成果概要
内燃エンジンのオイル消費の増大はエンジン性能を劣化させるとともに,排出されたオイルによって排気後処理装置の劣化や頻繁なメンテナンスを誘発し,さらには粒子状物質の発生要因となる.このようなオイル消費のエンジン開発段階にける評価は実験に頼っているのが実情であり,設計段階における机上予測手法の確立が要望されている.
そこで,本研究では,オイル消費の主要因たるオイル上がりメカニズムを解明するために,ピストンリング列におけるオイル上がりの入口であるオイルリング下において,ピストン下降行程の潤滑油挙動および油圧発生要因を数値解析によって検討した.数値解析結果の妥当性については,内燃エンジンと同様のピストン―コンロッド機構を備えるエアコンプレッサにおけるオイルリング下油圧測定結果との比較検討を行った.なお,数値計算では,解析領域内のオイルをニュートン流体として,その支配方程式である連続の式およびNavier-Stokes方程式をSIMPLE法によって数値的に解いた.
オイルリング下部に発生する油圧について供給油量の影響を調べるため,ピストン上昇行程時にオイルリングがシリンダライナ上に掻き残す油膜を従来研究から検討し,解析領域内に流入するオイルの量を変化させて解析を実施した.この結果から,オイルリング下の油圧は油膜厚さ従って変化し,供給油量の影響が大きいことが分かった.ピストン下降行程前半の油圧上昇において,測定結果とほぼ同等の油圧が計算される油膜厚さはシリンダ壁に形成される油膜としては非常に厚い.この要因の一つに,実験に用いられたエアコンプレッサのピストンのオイルリング溝には油穴が存在し,当該部経由でピストン裏面からピストンスカート部にオイルが供給されることが考えられる.一方,下降行程後半における油圧の計算結果は測定結果と大幅に相違していることから,クランクケース内圧等の要因が考えられたが,これを考慮した場合も計算結果に大きな影響はなく,行程後半の油圧の発生についても,主に供給油量が関係していると推察される.