表題番号:2013A-917 日付:2014/05/13
研究課題心臓の収縮・拡張に伴う冠動脈屈曲運動下でのステント破損予測解析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 准教授(任期付) 岩崎 清隆
研究成果概要
冠動脈ステント治療は,本邦で年間7%程度のステント破断が生じ,破断したステントでの再狭窄率は85%程度と非常に高い報告もある.一度留置すると取り出せないため,冠動脈に留置されるステントには高い破損耐久性が求められる.我々は心臓の収縮・拡張に伴う右冠動脈の屈曲変形に着目し,実臨床に即した冠動脈ステントの屈曲加速耐久試験装置を開発した.患者から得た右冠動脈屈曲角度の平均値である収縮期105deg,拡張期125degの角度を屈曲冠動脈モデルに作用する加速耐久試験装置を開発し,デザイン・材質の異なるステントに対し,屈曲加速耐久試験を実施してきた.本研究では,耐久試験結果でのステント破断の原因を明確化し,ステント破断予測を行うシステムを構築するため,有限要素法を用いた冠動脈屈曲変形下におけるステントの応力解析方法の構築を目的とした.解析はステント製造から実臨床で使用される一連の手順を踏まえ,以下の3ステップに分けた.
(1)ステントをバルーンにかしめる圧縮解析
(2)血管モデル内で円筒状にモデル化したバルーンを用いたステントの拡張・留置解析
(3)ステントに屈曲負荷を作用させる屈曲負荷解析
(3)の屈曲負荷解析は,血管モデルに収縮期105deg,拡張期125degを屈曲角度とする屈曲変形を作用させ,ステントへ間接的に屈曲負荷を作用させた.臨床で使用されているCoCr製のステントを対象とし,解析には非線形有限要素解析ソフト(ADINA8.9,ニュートンワークス)を使用した.解析より得たMisesの相当応力から応力振幅と平均応力を求め,疲労安全率を算出した.疲労安全率は屈曲中央のリンク部およびリンクが接合しているクラウン部で小さいことが明らかとなった.本解析対象ステントは耐久試験において,屈曲中央のリンク部でステント破断が生じており,疲労安全率の小さい部位と一致する傾向を確認できた.
以上より,ステントをバルーンにかしめ,バルーンでステントを血管内に拡張し,屈曲変形を作用させる一連の有限要素解析方法を構築した.