表題番号:2013A-911 日付:2014/04/07
研究課題減数分裂においてみられる特殊な微小管の機能に迫る
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 准教授 佐藤 政充
研究成果概要
 当該研究では、体細胞分裂と減数分裂という目的が異なる2つの分裂様式において、細胞内の現象や分子機構がどのように異なっているのか、主に細胞骨格の微小管に焦点を当てて解析をおこなってきた。
 研究をおこなうにあたり、人為的に減数分裂を誘導できる優れたモデル生物である分裂酵母を使用した。分裂酵母の微小管・動原体・中心体(SPB)をそれぞれGFP・mCherry・CFPという3つの異なる蛍光タンパク質でラベルした細胞を作製し、体細胞分裂および減数分裂を誘導することで、細胞の微小管構造がこれら2つの分裂様式においてどのように異なった挙動を示すのかが明らかになる。我々は既に、減数分裂が始まる直前に、体細胞分裂の開始前には見られない特殊な微小管構造が形成されることを発見していた。本研究では、この微小管の挙動がどのような因子によってなされているのかに焦点を当てて研究してきた。その結果、微小管結合タンパク質Dis1が、微小管の脱重合に関与する可能性が示唆された(Kakui et al. Nature Cell Biology, 2013)。
 近年いくつかのグループがDis1の高等生物オーソログであるTOGタンパク質について、微小管を重合する活性があることを報告している。我々の発見は、この一般的に知られるTOGの機能とは異なり、分裂酵母の減数分裂においてはDis1/TOGが微小管を脱重合するという、全く正反対の機能を担うことを示している。そこで我々は、Dis1がどのように減数分裂微小管の脱重合を起こしているのか、主に次の2つの可能性から追究し、現在も研究を継続している。(1) Dis1が直接微小管を脱重合する可能性。(2) Dis1が何か別の因子を介して(相互作用因子などを介して)微小管を脱重合している可能性。
 興味深いことに、Dis1と類似したパラログ分子であるAlp14は、他の生物におけるTOG同様に、分裂酵母の減数分裂では微小管の重合に関わるという結果を出している(同)。従って、この類似した2つの因子は、少なくとも減数分裂において、明確な機能の分離がなされていることが分かり、その原因について追及している。