表題番号:2013A-909 日付:2014/02/27
研究課題概日時計と代謝関連遺伝子の同時モニター系を用いたin vivo肥満分析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 助手 田原 優
研究成果概要
哺乳類の概日時計機構は、主要なエネルギー代謝関連遺伝子の発現調節を行なっている。肥満状態における概日時計機構の減弱化の報告(Kohsaka et al., Cell Metab., 2007)がある一方で、概日時計の破綻は肥満・糖尿病のリスクを増大する(Turek et al., Science, 2005)。しかし、肥満が進行していく過程において、いつ概日時計が破綻するのかは分かっていない。申請者は現在までに、マウスの概日時計振動を生きた状態で測定する事に成功している(Tahara et al., Curr Biol., 2012)。本研究では、まず概日時計と代謝関連遺伝子の両方を同時にin vivoでモニター出来る実験系の確立を目指した。その後、高脂肪食負荷による肥満誘導時に、概日時計とエネルギー代謝経路の破綻の過程を経時的に観測する事で、肥満発症における概日時計の意義を探る。また、慢性時差ボケマウスにおいても、肥満と体内時計の相互作用を検討する。
概日時計と代謝関連遺伝子をin vivoで同時モニターするために、波長の異なる2種類のルシフェラーゼ遺伝子(SLG緑, SLR赤)と目的遺伝子のプロモーター領域を組み込んだアデノ随伴(AAV)ウイルスベクターを構築する。目的遺伝子は、概日時計遺伝子(Bmal1)と主要な代謝関連遺伝子(Pparα, Pgc1α, Srebp-1c等)とする。現在までに、強制発現プロモーターを挿入したSLG, SLRを作成し終えた。また、Bmal1-SLGのベクターも完成した。また、細胞へのトランスフェクションにより、二色のルシフェラーゼの発光波長域が分かれていること、またその細胞をマウス皮下に移植し、in vivo imaging systemを用いて撮影した結果も、同様に二色の発光を確認できた。今後の予定として、ウイルスを作成し、マウスへの感染を試みる。特に尾静脈から投与し肝臓や筋肉組織への感染を行う。また、脳室内や小脳、大脳皮質への直接投与も検討してみる。
また、ウイルス作成完了後に感染実験を予定している、慢性時差ボケモデルについても実験を行った。時差ボケモデルマウスは、明暗サイクルを8時間シフトさせると共に、ケージの浸透による断眠を暗期に行った。マウスの活動は、ケージの浸透により上がり、その結果浸透無しの群に比べ有意に、新しい位相へ同調した。現在、それらのマウスの末梢時計について、PER2::LUCノックインマウスを用いて検討している。