表題番号:2013A-895 日付:2014/04/05
研究課題生体に学ぶシリカ系自己修復材料の創製
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 准教授 下嶋 敦
研究成果概要
自己修復材料は外部応力によって生じた損傷を自発的に修復する能力を有する材料であり、幅広い分野での応用が期待されている。生体系には様々な自己修復機能が存在するが、ある種の生体高分子は可逆的な水素結合を積極的に利用して高次構造の損傷を修復することが知られている。このような水素結合の可逆性を利用したポリマーの設計は最近非常に注目されており、熱可逆性高分子ゲルなどユニークな物性を持つ材料が報告されつつある。本研究では、従来の有機ポリマー系自己修復材料よりも高い安定性、優れた力学特性、そして高い修復能を有する新しい無機-有機ハイブリッド型の自己修復材料の設計を目的としている。低ガラス転移点、耐熱性、透明性、生体適合性などの特長を有する無機高分子であるポリジメチルシロキサン(PDMS)を用い、水素結合性有機基で修飾すると同時に、剛直な無機フィラーでありかつ架橋点としても働くケージ状シロキサンオリゴマーにグラフトすることによって、水素結合性の星形ポリマーの合成について検討した。ケージ状シロキサンオリゴマーは、テトラメチルアンモニウムイオン存在下でのケイ素アルコキシド(Si(OEt)4)の加水分解・重縮合反応によって得られるケイ酸8量体をジメチルクロロシランでシリル化した後、Si-H基をSi-Cl基に変換することで合成した。次に、環状トリシロキサンのアニオンリビング重合により分子量の制御されたPDMSを合成し、停止剤として上記のSi-Cl修飾型のシロキサンオリゴマーを添加することによって、シロキサンユニットあたり4~5本のPDMSがグラフトされたポリマーが形成されたことをNMR等で確認した。さらに、あらかじめPDMSの一部のメチル基をビニル基に置換し、それらを基点に水素結合性の有機基であるウレイドピリミジノンで修飾することによって、水素結合性ポリマーの合成に成功した。今後、ポリマーの構造と物性の相関について検討を行う予定である。