表題番号:2013A-810 日付:2014/04/08
研究課題インターネットにおける仲介者の法的責任
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学学術院 教授 上野 達弘
研究成果概要
 本研究課題「インターネットにおける仲介者の法的責任」をめぐっては、わが国よりも欧米を中心とする諸外国で盛んな議論が繰り広げられている。そこで、上野は、2013年9月、この分野における代表的な研究機関であり、世界中の情報と研究者が集まるマックスプランク知的財産法研究所(ミュンヘン)に滞在し、現地の多数の研究者と交流する中で、ドイツ、イギリス、アメリカ、カナダ、スウェーデン等におけるインターネット上の仲介者(intermediaries)をめぐる諸事例を幅広く研究した。
 その結果、動画投稿サイトや検索エンジン、あるいはオンライン・ショッピングモールやネットオークション、さらには、ハイパーリンクまとめサイトなど、インターネット上の仲介者の責任をめぐって、諸外国で実際に訴訟が進行中であることが明らかとなった。また、eBay等をめぐる欧州司法裁判所の2つの判決が、ヨーロッパはもちろん、それ以外の国においても普遍性を持った基準として広く参照されていることが判明した。そこで、上野は、そうした諸外国におけるケースを調査するとともに、これをめぐるホットな議論を研究した。
 その成果は、すでに具体的に公表を始めている。ちょうど、2013年9月16日から18日において、歴史的学会として大変著名なALAI(国際著作権法学会)の年次大会がカルタヘナ(コロンビア)において開催され、そのセッションの一つがまさに「Technological intermediaries and Bases for liability」というテーマで行われ、上野も日本からただ一人の講演者として招かれ、同年9月18日に「Who are the technological"intermediaries"?」というタイトルで、インターネット上の仲介者の役割と責任について報告し(英語)、その後もパネリストとして議論に参加した。
 これを通じて、世界各国の著名な著作権法学者と親交を深めることができたことは非常に貴重な成果であった。実際のところ、この講演ををきっかけとして、2014年9月にブラッセル(ベルギー)で行われるALAI年次大会に再び招かれている。また、この講演をもとに論文を作成しており、2014年中にはALAIコロンビア支部から出版される予定である。さらに、同論文は、スペイン語に翻訳されてコスタリカにおいて出版される予定でもある。
 以上のように、本特定課題の研究支援を得て、非常に大きな研究成果をあげることができた。ここに改めて謝意を表したい。