表題番号:2013A-808 日付:2014/04/09
研究課題有権者レベルから見た選挙動員の動態に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学術院 助手 遠藤 晶久
研究成果概要
研究成果報告
 本研究の目的は、現代日本の選挙動員について、従来ブラックボックスとなっていた、有権者行動に与える影響のメカニズムを明らかにすることである。主たる研究対象は日本の有権者で世論調査データによる検証を行ってきた。本年度は、主に二つの側面からこの問題にアプローチをした。
 第一に、組織動員が投票参加に与える影響について、交差圧力(異なる党派からの動員圧力を同時に受けること)の分析を行い、社会的アカウンタビリティの問題から交差圧力が投票参加を抑制することを明らかにしようとした。従来の理解では、動員圧力を受ければ有権者は投票参加するという単線的な見方が主流であったが、本研究では、動員圧力について、同質圧力(一政党からの圧力)と交差圧力を区別したうえで、集団圧力が必ずしも単線的に投票参加を促進するわけではないことを検討した。研究成果は現在、論文としてまとめており、来年度以降、発表する予定である。
 第二に、もう一つの組織動員に関する理解―組織動員を受ければ、その政党に投票をする―についての検討を進めた。報告者は既に、組織動員を受けても有権者は自律的な投票決定を行なっていることを指摘し、盲目的な組織票という通説に疑義を投げかけている(遠藤, 2012)。本年度は、この研究の分析手法の問題点を克服するために、方法論的検討を進めた。特に、因果推論モデルによる世論調査モード間比較(CASI調査とPAPI調査の比較)を試みるための準備を行った。さらに、理論的には、狭く日本政治研究としてだけでなく、より普遍的なパトロネージ政治研究と接合することで、この研究を比較政治学の中に位置づけようと試みた。これらの方向性を探るために、早稲田大学政治経済研究所世論調査・実験方法論部会とSouthern Political Science Associationで報告を行った。現在、そこで得たフィードバックを参考にしながら論文を改訂しており、来年度以降、海外ジャーナルに投稿をする予定である。