表題番号:2013A-6499 日付:2014/04/23
研究課題反応性ブロック型高分子の合成と機能化
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 高等研究所 助教 須賀 健雄
研究成果概要
1. 研究目的
 ラジカル・イオンを用いた有機メモリ特性の発現には、モルフォロジーの制御と機能部位の選択的なドメイン配置が鍵となる。本研究課題では、Click反応を用いてラジカル/イオンを任意の割合で導入、共存させたブロック共重合体の合成、AFMによる相分離構造解析およびI-V特性の評価を目的とする。またControl実験としてペンタフルオロフェニルエステルを有する単独重合体にラジカル/イオンを導入したランダム共重合体の合成およびI-V特性も合わせて報告する。

2. アミノ基修飾イオン液体の合成とClick反応
 1-メチルイミダゾールに2-ブロモエチルアミン臭化水素塩を反応させイミダゾリウム塩へと誘導後、PF6塩にアニオン交換した。中和によりアミノ基を遊離させるとイミダゾリウムからプロトン脱離によるカルベンの副生が示唆されたため、Click反応時にin-situで中和することにした。RAFT重合により得られた活性エステル(PFPA)含有ブロック共重合体(PS-PFPA)のDMF溶液にアミノ-TEMPO(PFPAに対し1当量以下、例えば0.9, 0.6当量)とトリエチルアミンを加え反応させることで、予めPFPAドメインにランダムにTEMPO基を導入した。次にone-potでアミノ基修飾イオン液体を大過剰加え未反応PFPA部位にイオン液体部を導入した。TEMPOラジカル/イオン液体部位の組成比は仕込み比で自在に調整でき、PS-PFPAのセグメント長の制御と合わせ、多様な機能性ブロック共重合体の精密合成に成功した。

3. ミクロ相分離挙動とメモリ特性
 イオンのみもしくはラジカル/イオン(0.70/0.30)を導入したポリマーでは、10~15nmのスフィア型の相分離構造が得られたが、ラジカルの比率の増加に伴いポリスチレンドメインとの相溶性が向上し、ラジカルのみを導入したポリマーでは明瞭なスフィア構造ではなく、凝集構造が観察された。ITO電極上にスフィア型の機能性ブロック共重合体を成膜し(100 nm)、Alを蒸着した素子では、ラジカル/イオンが共存する場合の電流電圧特性で、-2 V付近を閾値電圧としてON状態へスイッチし、ヒステリシス曲線を描いた(WORM型, ON/OFF比 10^3)。一方、ラジカルのみ、イオンのみの場合はスイッチングを示さなかった。これより、同一ドメイン内にラジカルとイオンが共存している場合のみメモリ特性を示すという従来の知見を支持した。また、ON状態、OFF状態をそれぞれ16時間以上保持した。

以上、ラジカル/イオン共存型のミクロ相分離ドメイン構造の形成を目的として、Click反応を組み込んだ機能性ブロック共重合体の精密合成法を確立するとともに、メモリ素子としての特性を明らかにした。