表題番号:2013A-6496 日付:2014/04/01
研究課題有機・無機半導体ヘテロ構造を用いた高感度光検出器の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 高等研究所 准教授 西永 慈郎
研究成果概要
フラーレンC60は1985年の発見以降、ナノ材料として多くの期待を集め、超伝導や太陽電池などの特異な物性が報告されてきた。C60分子はサッカーボール構造の対称性の高い分子であり、炭素原子間は共有結合で形成された極めて安定な分子といえる。そのためC60結晶薄膜は気相成長によって得ることができ、結晶基板上のエピタキシャル成長が報告されている。そこで、このC60分子に無機半導体で培われた半導体結晶成長・評価技術を応用することで、有機・無機半導体ヘテロ構造の作製および新規電子デバイスの提案ができると考えた。無機半導体と有機半導体は同じ半導体でありながらも、両者を組み合わせたヘテロ界面についての基礎的理解やデバイス応用に関する報告は少なく、厳密な制御技術の確立とその電子構造の理解を深めることは、新たな研究分野の開拓に大いに寄与するものと考えられる。そこで本研究の目的は、分子線エピタキシー (MBE) 法により、C60添加 GaAs薄膜を作製し、その光学的特性を評価し、高感度赤外線検出器を作製することである。MBE法によりC60 doped GaAs薄膜を作製したところ、GaAs結晶に欠陥なくC60分子の添加に成功した。電気的特性より添加されたC60分子はGaAs結晶中にて電子トラップとして機能し、電界を印加、もしくは赤外線を照射することで、トラップされていた電子が放出されることがわかった。これはC60分子が無機半導体中にてサイズが均一な量子ドットとして機能していることを示唆している。次にAlGaAs/GaAs界面に発生する2次元電子ガス近傍にC60分子を添加し、電気的特性がどのように変調されるかを検証したところ、AlGaAs/GaAs界面から離れたところにC60分子を添加することにより、2次元電子ガスの移動度を下げることなく電子濃度を減少させることに成功した。このC60添加HEMTデバイスに赤外光を入射したところ、C60分子にトラップされていた電子が励起され、AlGaAs/GaAs界面に移動し、高移動度のチャネルとして機能することを確認した。この現象は、少ない光で抵抗率を大きく変化させることが可能であることを示しており、高感度赤外光検出器として機能することがわかった。極低温において、HEMT構造に光照射すると、AlGaAs中のDXセンターから電子が励起され、2次元電子ガスを形成し、永年光伝導を示すが、このC60トラップは光照射を止めると再度電子をトラップすることで絶縁化させ、光照射することで2次元電子ガスを再度形成することがわかった。これらの結果は、C60トラップの大きな特徴といえる。