表題番号:2013A-6481 日付:2014/02/26
研究課題高等学校L2リーディングの指導における内容スキーマ指導の有効性に関する実証研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 本庄高等学院 教諭 高山 正弘
研究成果概要
本研究はL2Readingのモデルの構成要素、特に内容スキーマの有効性について検証することを目的とした。多くの先行研究が、L2の言語的能力が高い学習者ほどL1Readingの能力をうまくL2Reading能力に転移させているという考え方を、大体が量的分析による実証的研究によって支持する結果を出している。この考え方を基にした場合、L2Readingの一般的モデルはCoadyやBernhardtのL2Readingのモデルに見られるように、コンポーネントとしては、①高次の概念把握能力、②背景知識、③L2の言語的能力の3つとなる。本研究は上記のL2リーディングのモデルにおいて、2つめのコンポーネントである「背景知識」の部分に焦点を当て、リーディングにおけるその有効性を扱うものである。これまでの先行研究では、形式スキーマについてはその指導の有効性についてはかなりポジティブな成果が出ている。しかしながら、内容スキーマの指導の有効性については、研究者によって意見が分かれている。そこで本研究はこれについて追実験を行い検証した。
被験者は25名2クラスの計50人を対象に、実験群と統制群に分け、双方に同一の時事問題に関する英文記事(768語)を読ませた。実験群の方は事前にトピックに関する背景知識を授業担当者から説明しWeb上で関連サイトを確認させた。統制群に対してはトピックについて何ら背景は与えなかった。英文記事を読んだ後に双方に同一の確認テストを実施し統計処理をおこなった。平均値は前者が後者を数点上回ったが、これら2群の平均値の差が統計的に有意であるかどうかt検定にかけて検証したところ、P(T<=t) 両側が0.18で有意差はないことが判明した(t=1.35, df=44, ns)。
これは一つには、内容理解確認テストの中の、ある設問(英問英答)に対して、被験者の多くが英文記事の中の基本的なif節の名詞用法を理解しておらず、十分に内容把握ができていなかったことによることが分かった。トピックの背景等の内容スキーマを事前に読み手に提示することが必ずしも有効ということではなく、やはり、L2の言語的能力も同時に涵養する指導が必要であろう。