表題番号:2013A-6480 日付:2014/04/10
研究課題3~4世紀における高台社会の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 本庄高等学院 教諭 三﨑 良章
研究成果概要
 甘粛省高台県では、近年、駱駝城東南墓群、駱駝城西南墓群、許三湾墓群、地埂坡墓群等から3~4世紀の中国社会を研究するのに当たって注目すべき画像磚や壁画などの墓室画像や、随葬衣物疏、鎮墓文、棺板題記等の文字資料遺物が、続々と出土している。本研究ではそれらの全容を明らかにし、さらに詳細に分析・検討することを通して、当該時代の高台の社会状況の一面を明らかにすることを企図した。
 具体的には高台県で高台県博物館の寇克紅館長から高台地域の最近の発掘状況の説明を受け、さらに趙万鈞副館長から地埂坡4号墓壁画、高台県博物館蔵画像磚等の画像データを提供された。それらのなかで、特に地埂坡4号墓壁画の画像データによって、現在の高台県の北部である3~4世紀の酒泉郡会水県はソグド人などの非漢人が主体性をもつ社会が形成されていたことが明らかになった。それに対して高台県南部にあたる酒泉郡表是県は漢人豪族が中心の社会であり、非漢人は漢人豪族に使役される存在であったことを確認することができた。すなわち酒泉郡という限られた地域のなかに、性格の異なる社会が併存していたのが3~4世紀の中国社会の一面であるという見通しを得ることができた。
 また3~4世紀における高台の文字資料としては、発掘簡報や高台県博物館の展示から「趙阿茲衣物疏」、「周振・妻孫阿恵墓券」、「建興二十四年牘」など25点の存在が知られていたが、研究遂行の過程で北京の古陶文明博物館に高台県で出土したと思われる随葬衣物疏が収蔵されているとの情報を得た。そこで同博物館に赴き、董瑞館長の説明を受けた上で「夏侯妙々衣物疏」を詳細に調査することができた。当該文字資料は、「晋故酒泉表是都郷仁業里大女夏侯妙々衣物疏」という記述や形態・字体等から3~4世紀の高台で作られたものと考えられ、26点目の文字資料である可能性が高いことを確認した。文字資料を用いての高台社会の研究は緒に就いたばかりであるが、今後、画像資料と連動させて、高台社会の検討を進める予定である。
 研究成果の一部はすでに口頭で報告したが、2014年度に論文としてまとめる予定である。