表題番号:2013A-6475 日付:2014/04/11
研究課題日本中世における歴史災害関連史料の収集と基礎的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 高等学院 教諭 松澤 徹
研究成果概要
 本研究では、日本の歴史災害の主なものを年表化し、それぞれの項目について関連史料と先行研究文献を収集してデータベース化した。2011年3月11日の東日本大震災をきっかけにして、歴史災害への関心がかつてないほどに高まっている。日本の歴史が、日本列島という国土の地理的な特性と深く結びついて展開してきたことを前提として、通史叙述を書き直すことが求められている。そもそも日本列島はプレートの境界に位置する地震国・火山国であり、そのため多くの地震、津波、火山の噴火などの巨大災害に襲われてきた。歴史学の研究動向としては、1995年1月17日の阪神淡路大震災の前後から、人と自然の関係史をもとに歴史を叙述しようとする環境史の分野で多くの研究がなされるようになった。そこでは歴史災害のみならず、気候変動も含めた自然環境へ注目が集まっている。さらに近年では、災害を契機とした政策転換が社会に大きな影響を与えたとする研究も出てきており、従来の日本史年表に歴史災害の情報を付け加えることには、大きな意味があると思われる。
さらにその年表を、教材として使えるように整理したうえで研究成果の経過報告を含めて高校日本史の授業に導入した。一般に、通史学習のなかで歴史災害が主要な題材として取り上げられることは極めて少ないのが現状である。教科書をみても、近現代の関東大震災や阪神淡路大震災についての記述はあるものの、前近代については、江戸時代の「三大飢饉」や治承・寿永の乱のさなかの「養和の大飢饉」に関するわずかな記述を例外として、歴史災害についてほとんど述べられていない。とくに中世後期については「飢饉と戦争の時代」として位置づける研究動向があるにもかかわらず、中世最悪の飢饉といわれる「寛正の大飢饉」や、南海・東南海・東海地震の同時発生と考えられる巨大地震「明応地震」についての記述すら、ほぼ皆無といってよい。このような歴史研究と歴史教育の現場の断絶状況をつなぎ、歴史災害に関連する史料を教材化する研究が求められていると考える。その際には、関連史料を高校生にも読みやすく書き下し、絵画資料などビジュアルなものを教材化して、授業計画と照らし合わせながら、高校3年生の授業の中で年度中に数回の授業をおこなった。