表題番号:2013A-6442 日付:2014/04/30
研究課題イギリス時代の早川雪洲
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 国際学術院 教授 森田 典正
研究成果概要
1910年代から20年代初頭にかけてハリウッドで活躍し、日本人俳優としては希な名声を博した早川雪洲については、2冊の自伝と数冊の伝記研究が出版されているが、自伝については不正確な記述とともに、数々の誇張や虚構が混じり、実像とはおよそかけ離れていることも少なくなく、伝記研究についても、自伝に頼ることが多いゆえに、信頼に足るものが少ないことも事実である。とりわけ、早川雪洲が1923年から24年にかけて、当時、演劇の公演中であったフランスからイギリスに呼ばれ、御前公演や二本の映画出演をしていた時期については、彼の活動や動向が余り知られていない。本研究はGlobal Oriental/The Japan Society刊 Britain and Japan: Biographical Portaits 第九巻に早川雪洲の伝記エッセーの執筆を依頼されたことを機に、イギリスにおける雪洲の生活や仕事を中心にして洗い直し、より正確な小伝を書くためのものであった。小伝を書くにあたっては伝記、研究書をあたるのと同時に、古い時代の日本の新聞や雑誌を調べ、ロンドンのBritish Film Institute で、雪洲出演のイギリス映画二作品のうちアーカイヴ所蔵の一本、_Sen Yan's Devotion_の試写を受けた。もう一本の_The Great Prince Shan_については、BFIの映画アーカイヴには所蔵がない。その一方で、雪洲の訪英や、御前演劇公演や、地方巡業公演、映画二作品にかかわる記事を、大英図書館コリンデール新聞図書館で調査した。たとえば、雪洲は自伝の中で、初めてヴィクトリア駅に到着したとき数万人の群衆やファンに出迎えられ、ロンドン市長の出迎え車であるロールス・ロイスはフェンダーと窓が破壊されたとあるが、そうした記事は見当たらず、雪洲の訪問は小さな囲み記事でしかみられなかった。本研究の成果は以下の書物のなかに掲載予定である。