表題番号:2013A-6433 日付:2014/04/02
研究課題現代社会と文明
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 国際学術院 教授 大平 章
研究成果概要
特定課題A(「現代社会と文明」)では20世紀の英国作家D・H・ロレンスの作品に見られる現代文明論、社会論を中心におおむね以下のような内容の研究に着手した。そこにはロレンス以外の他のヨーロッパの歴史家、哲学者、社会学者の見解も含まれ、研究そのものがより視野の広いものになるような配慮がなされた。それは、ロレンスの存在を、単にイギリスのみに限定するのではなく、当時のヨーロッパの思想状況全体にかかわるものとして理解しようとする意図の表れである。

① 2000年から2014年までに刊行されたロレンス関連の文献を購入し、その一般的な趨勢を把握すること。ロレンスの小説、詩、旅行記に関連する文献の中から、ロレンスの存在をグローバルな文学運動の視点からとらえようとするもの、たとえば、ロレンスと未来派の関係に言及しているようなものに注目すること。そして、その背景や歴史性を理解すること。
②ロレンスの現代社会や現代文明に関する見解をまとめながら、そこに20世紀英国作家の社会認識の特殊な傾向を識別すること。現代作家は一般的に現代の文明にたいしてどのような態度をとるのかを理解すること。
③ロレンスの教育論の特質を分析し、それを他の作家や批評家の教育論と比較しながら、英国知識人の教育観の一般的傾向や趨勢を把握すること。その際まず、比較の対象の中心をロレンスが生きていたときに関係があった人々(ラッセル、エリオット、ハクスリー、C・P・スノー)に置くこと。
④英国知識人の教育への関心から、およびその独自の教育思想からイギリスの伝統的文化全体を把握すること。イギリス人の教育思想に見られるグローバルな発想を、平和主義、環境・自然保護運動の発展と関連させること。そこにロレンスの近代主義批判の問題を重ね合わせること。
⑤ロレンスの総合的研究(小説・詩・エッセイ・戯曲・旅行記など)を深め、量的には博士論文に近いものにすること。