表題番号:2013A-6414 日付:2014/04/21
研究課題ジュニア期女子バスケットボール選手のACL損傷リスク評価-試合映像の分析より-
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) スポーツ科学学術院 教授 福林 徹
研究成果概要
〈背景〉本研究では膝前十字靭帯(以下ACL)損傷のスクリーニングテストにおいてハイリスクと評価された選手がバスケットボールの試合中にどのような動きをしているか試合映像の分析より検討を行った.本研究の目的は,ACL損傷危険率予測指標を用いてハイリスク選手を抽出し,その選手がバスケットボール競技中においてもACL損傷に繋がるリスクの高い動きをしているか検討することとした.
〈方法〉対象は健康な中学女子バスケットボール選手18名とした.Drop vertical jump着地時の膝内側変位量,膝屈曲角度変位量,体重,脛骨長,大腿四頭筋/ハムストリングス筋力比(QH比)よりACL損傷危険率を算出した.ACL損傷危険率が80%以上であった1名の試合映像を4台のビデオカメラ(60Hz)を用いて4方向より同時に撮影した.バスケットボール競技においてACL損傷が多く発生する片脚での着地・ストップ動作を試合映像より抽出した.映像の抽出基準は先行研究に基づき,1) 前額面および矢状面の映像,2) 足部接地が確認できる映像,3)選手が鮮明に映っている映像,4)着地・ストップ動作中に接触が無いあるいは最低限の映像とした.前額面映像より接地時の膝関節外転角度および体幹側方傾斜角度を算出し,矢状面映像より膝関節屈曲角度を算出した.対象脚は左脚とした.
〈結果〉抽出基準を満たした3映像を解析対象とした.接地時の膝外転角度は7.8±5.2°, 体幹側方傾斜角度は4.3±1.5°, 膝屈曲角度は22.7±13.7°であった.
〈考察〉ACL損傷受傷場面において,接地時の膝外転角度は5.5±6.0°, 体幹側方傾斜角度は11.1±2.0°, 膝屈曲角度は18.3±7.5°と報告されている.本研究におけるハイリスク選手は,ACL損傷受傷膝に比べ体幹側方傾斜は小さく,膝屈曲角度は大きくリスクの低い動作を示した.一方,膝外転角度に関してはACL損傷受傷膝よりも大きく,リスクが高い動作を示した.
〈結論〉Drop vertical jumpによるスクリーニングテストでハイリスクとされる選手は,バスケットボール競技中においても前額面上でリスクの高い動作を呈している可能性が示唆された.