表題番号:2013A-6411
日付:2014/03/17
研究課題運動による抗酸化酵素の産生と動脈硬化症の抑制
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | スポーツ科学学術院 | 教授 | 鈴木 克彦 |
- 研究成果概要
- 動脈硬化症は、血管壁へ浸潤した免疫細胞の一種であるマクロファージがコレステロールを取り込み泡沫化することで発症する。これにともなう酸化ストレスの増大は動脈硬化症を促進することから、酸化ストレスを軽減することで動脈硬化症の発症を予防することが期待できる。運動は動脈硬化症の予防に効果的であることが運動介入研究や疫学研究により報告されているが、その分子メカニズムは明らかにされていない。本研究では、運動による動脈硬化症の抑制とその分子メカニズムについて、運動トレーニングによる抗酸化酵素の増加が酸化ストレスを軽減し動脈硬化症の発症を予防すると仮説を立て検証することを目的とした。トレーニングには自由走行ケージによる自発的な運動トレーニングを用いマウスのストレスを軽減した運動のみの効果を得られるよう工夫した。解剖はトレーニング期間最終日の一過性の運動の効果を取り除くため、運動トレーニング期間終了の24時間後に行った。血液は麻酔下で心臓より採血し、頸椎脱臼後、PBSにて灌流後に大動脈と骨格筋を採取した。動脈硬化巣の評価は採取した動脈から凍結検体を作成後、薄切しオイルレッドO染色にて評価した。骨格筋の抗酸化酵素の測定はウェスタンブロット法を用いた。その結果、運動トレーニング群はコントロール群に比べ摂餌量が多いにもかかわらず体重の増加は有意に抑制された。運動トレーニング群の骨格筋はトレーニング効果の指標である遅筋化が観察された。骨格筋抗酸化酵素は、運動トレーニング群はコントロール群に比べ分泌型の抗酸化酵素である細胞外抗酸化酵素の他、ミトコンドリアや細胞質の抗酸化酵素の発現を有意に増加した。分泌型の抗酸化酵素は血液中にも分泌されるため、血管の酸化ストレスを軽減し動脈硬化を抑制することが期待できる。現在動脈硬化症の組織学的評価と酸化ストレスの検討を進めており、運動トレーニングによる動脈硬化症の抑制が証明できれば、運動トレーニングによる動脈硬化症予防は、運動による抗酸化酵素の増加が一因であることを証明できる意義のある研究に発展すると考えている。