表題番号:2013A-6407 日付:2014/03/25
研究課題うつ予防のための身体活動の促進および座位行動の改善に関する指針の作成
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) スポーツ科学学術院 教授 岡 浩一朗
研究成果概要
 本研究の目的は、わが国の成人における客観的・主観的に評価した身体活動および座位行動と抑うつ症状との関連を検討し、効果的なうつ予防対策の指針作成に向けて、より焦点を当てるべき身体活動・座位行動の介入場面や活動内容の目安等を明らかにすることであった。
 対象者は、住民基本台帳より無作為抽出した40~69歳の地域住民3,000名のうち、研究参加に同意し、各種調査・測定に協力した410名であった。身体活動・座位行動に関しては、加速度計(オムロンヘルスケアActive Style Pro HJA-350IT)および調査票(Global Physical Activity Questionnaire:GPAQ;Workforce Sitting Questionnaire改良版)により評価した。また、抑うつ症状の評価には、抑うつ状態自己評価尺度日本語版(Center for Epidemiologic Studies Depression Scale:CES-D)を用いた。さらに、個人的属性として、性、年齢、教育歴、世帯収入、婚姻状況、就業状況、同居の有無、喫煙状況、飲酒状況、現病歴、BMI(身長、体重より算出)についても調べた。これらのデータについて欠損等がなかった343名を最終的な分析対象者とした。多変量ロジスティック回帰分析により、客観的評価による中等度の強度以上の身体活動および座位行動、生活場面ごとの中等度の強度以上の身体活動・座位行動指標と抑うつ症状との関連について検討した。すべての統計処理には統計解析ソフトSTATA12.0を用いた。
 客観的評価による総身体活動について、全ての予測される交絡要因および客観的評価による総座位時間を調整しても、中等度の強度以上の身体活動時間の長い群は、短い群と比較して、抑うつ症状と有意な負の関連が認められた。生活場面別の身体活動については、仕事中における中等度の強度以上の身体活動時間の長い群は、低い群と比較して、約2.1倍抑うつ症状を示す割合が高かった。一方で、余暇時間における中等度の強度以上の身体活動時間が長い群は短い群と比べて、抑うつ症状と有意な負の関連がみられた。
 客観的評価による総座位行動に関して、全ての予測される交絡要因および客観的評価による総身体活動時間を調整した結果、総座位時間と抑うつ症状に有意な関連は認められなかった。生活場面別の座位行動では、仕事や移動中以外での座位でのPCやスマートフォン利用時間の長い群は、短い群と比較して、約2倍抑うつ症状を示す者の割合が高かった。その他の生活場面別座位行動指標と抑うつ症状には有意な関連はみられなかった。
 今後、うつ予防対策の指針作成に向けては、中等度の強度以上の総身体活動に加えて、仕事および余暇場面における中等度の強度以上の身体活動に着目すべきである。一方、座位行動に関しては、余暇でのPCやスマートフォン利用に伴う座位時間(移動中や仕事中を除く)を減らす取り組みが重要であることが分かった。