表題番号:2013A-6377 日付:2014/04/20
研究課題日本語少人数グループ授業における異なる日本語力を持つファシリテータ機能の分析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 教授 保崎 則雄
研究成果概要
本研究では、ドイツ、ハイデルベルグ大学において、日本語を学んでいる3学期生の学生の日本語作文において、少人数制指導を用い、グループリーダーを4 つのグループに各1 名ずつ配置した場合、どのような教え、学び、ファシリテーションが生じるのであろうかということを調査し、それぞれのグループに配置した日本語母語者、日本語非母語者のファシリテーションの様子を、受講学生の語りと合わせて分析した。その際、グループリーダー4名の日本語力、指導経験が異なるような配置を計画的に行い、それぞれの指導の仕方にどのような相違点が出るのかということをリーダー、学生へのインタビュー調査、質問紙調査、そして、研究者による観察をもと包括的、且つ個別的に分析した。それぞれのグループに配置されたドイツ人日本語学習者は、3~4名であり、グループ内でバランスを取り、日本語を学び始めて3学期目という括りは同じであったが、その中でも習熟度が上、中、下位というようになるように配置した。
 参加者全員の、時系列的な語りを総合的、構造的に分析した結果、グループリーダーの異なる日本語力が指導に影響を与えたことが確認でき、母語話者が指導するメリットと、学生の日本語学習の少し先を行く日本語中級者(JLPT N2レベル)のリーダー、あるいは、さらにその先を行く日本語上級者(JLPT N1レベル)が指導するときのメリットの違いがそれぞれ明らかになった。また、グループリーダーが母語話者かどうかということや指導経験の差に関わらず、アクティブラーニングの実践は十分可能だということがわかった。正統的な教え・学びの活動に参加することで、アクティブ・ラーニングが自然発生的に生成されるということが明らかになったことは非常に興味深い。このことは、アクティブラーニングの特質に深く関わるものであり、カリキュラムを決め、段階を決めて「教え込む」形式の授業スタイルとの対比として、自主学習、グループリーダーを含めた協働学習の発生、生起といったものが学習対象言語の習熟度と正比例的に関係する部分とグループリーダーの教育歴が教授法といった部分で、関わってくるものであり、必ずしも日本語習熟度、教育歴の量が学びの過程、結果に単純に比例すると言えないということを意味するものである。
また、ZPD(ヴィゴツキー)やi+1(クラシェン)といったことの具体例が確認されたという点からも興味深い。現在、継続してデータ収集を行うと同時に、成果としての日本語作文の分析を、定量的にも定性的にも進めている。