表題番号:2013A-6372 日付:2014/03/25
研究課題視線一致型TV会議システムを利用した大学間遠隔交流学習の学習環境の計量的評価
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 教授 永岡 慶三
研究成果概要
 本課題研究の目的は,視線一致型TV会議システムを利用した大学間遠隔交流学習のための学習環境デザインおよび実行時の効果について計量的評価を行う方法の開発することにある.ここにいう学習環境デザインとは,TV会議システムに関する一連の映像・音声などの個々の機材の構成と配置,並びに椅子や机と参加者の着席位置などのレイアウトなどを最適化する方式設計であり,それを実験試行することにより下記の各項について,計量的評価の方法を開発するものである.
 また今回は3D機能ソフトの導入により,一段と機能を向上させている.これに関し3D機能と2D機能の比較研究も行った.ここで利用する視線一致型TV会議システムは,遠隔両サイトの参加者どうしの視線が一致することで臨場感やゲイズアウェアネス(相手の視線を認識できること)の効果が高く,その特性が活かされるかどうかが重要である.
 本研究ではアンケートを集計した後,因子分析は主因子法,ブロマックス回転解の方法で行った.その結果,「疲労・違和感」,「積極性」,「視線・表情認知」,「意義・理解感」,「立体感」,「不満感」の6つの因子が得られた.因子得点の結果によれば,「3D視線一致」は「2D視線一致」に対して「積極性」,「視線・表情認知」,「立体感」,「不満感」の4項目でポジティブな結果を示していた.特に「立体感」の項目数値が高く,これは3Dシステム導入による臨場感・親近感向上を示していると示唆される.これによって「視線・表情認知」,「積極性」の向上を促し,結果として被験者が3Dシステムに満足しているのだと考えられる.「疲労・違和感」・「意義・理解感」に関しては疲労からくる集中力欠如などが原因として挙げられる.
 本研究の他の成果は次のようにまとめられる.
・3D視線一致型は,動作伝達やその理解に有効であるが,「疲労・違和感」が高く,常用に値する優れた遠隔学習環境とは言いがたい.
・ 2D視線一致型は,立体的な動作を認知できる環境に劣るが,「意欲・理解感」の向上に優れ,本研究環境の中では,最も適した遠隔学習環境であった.未来の教育環境を具現化する試みである.
・ 従来型は,他の環境に比べ学習環境として劣り,特に動作伝達を行える環境ではなかった.
 本研究はある意味,立体映像による双方向通信を実現し,将来的教育環境を具現化する試みである.一方で高機能ゆえに高い「疲労・違和感」や「3D酔い」(動揺病)などが懸念される.特に「3D酔い」に関しては「3次元映像に関するガイドライン試案」(機械システム振興協会)や「3DC安全ガイドライン」(3Dコンソーシアム)などで,適切な提案がなされているが,いずれも,市販されている眼鏡型3D映像を中心としたもので,本研究で採用した裸眼3D(レンチキュラfー型)については未解明な部分が多い.
 大学間遠隔交流学習のような双方向遠隔コミュニケーションでは,画面に注視する場合と,画面外の情報(例えば手元のメモなど)へ目を向けることもある.また,発言や発表時などは,能動的に映像空間に働きかけ,時に極度の緊張を伴う場合もある.こうした行動が「3D酔い」を発症するのか,または新たな症状などをどう発症するのかは,未解明であり,このような潜在的な負の側面は開発者が同時に研究する必要があると考える.