表題番号:2013A-6366 日付:2014/03/02
研究課題早稲田大学eラーニングメンタ育成プログラムの実現可能性研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 教授 向後 千春
研究成果概要
 eラーニング学習者を支援するメンタはeラーニング実施に欠かせない人材である.松田・原田(2007)は,メンタの支援活動として,学習内容に関する支援,感情面に対する個別支援,ディスカッションの進行支援,の3つを挙げている.学習内容に関する支援には,学習内容や教員の指示についての説明,学習成果のフィードバック,進捗管理,学習方法の改善の支援などが含まれる.感情面に対する個別支援には,学習者がeラーニングを継続するための助言や激励などがある(p.27).そして,これらの支援を行うためのポイントとして,フィードバックの内容,学習者が理解しやすい表現力,学習者の状況把握を挙げている(pp.73-74).
 eラーニングメンタ資質が,オンデマンド講義や課題など複数の授業要素の学習達成感や,理解度,満足度にどのような影響を及ぼしたかについて質問紙調査を用いて分析した.授業の受講生260人を対象に,メンタ資質重視度,メンタ資質達成度,授業要素に対する達成感,授業内容に対する理解度および満足度に関する調査を行った.回答期間は1週間とし,大学のLMSのアンケート機能を用いて実施した.
 その結果,以下のことが明らかになった.
 ・メンタ資質重視度の中で,「学習者への指導」は学習達成感に正の影響を与え,「学習者への対応」は負の影響を与えた.このことから,学習に関する実質的指導は学習を助けるが,過剰な支援は学習を阻害すると考えられる.
 ・メンタ資質は理解度および満足度へは影響せず,学習達成感が理解度および満足度へ影響した.学習者が授業要素を達成することにより,理解度および満足度が向上すると考えられる.
 ・メンタ資質の4つの因子の中で学習に最も影響を与えるのは「学習者への指導」である.したがって,eラーニングにおける学習を支援し,学習者の理解度・満足度を向上させるには,メンタの指導スキルに関する研修やトレーニングが必要である.
 参考文献
 松田岳士,原田満里子(2007)eラーニングのためのメンタリング―学習者支援の実践―.東京電機大学出版局,東京