表題番号:2013A-6359
日付:2014/03/10
研究課題熱帯林保全に向けた経済的インセンティブ導入の制度設計
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 人間科学学術院 | 教授 | 天野 正博 |
- 研究成果概要
- 「研究目的」
森林の環境保全機能を強化するための経済的インセンティブとしては、気候変動枠組み条約(UNFCCC)で導入されている炭素クレジットがよく知られている。炭素クレジットについて自然環境を自然資本といて評価するための手法を、実際の環境データを用いて実証的に開発するとともに、自然資本の所有権を住民に帰属させる制度設計という理論面での研究を行った。研究成果をUNFCCCで2020年より導入予定の
「研究対象地」
研究対象地は国外ではラオス国ルアンプラバン県ポンサイ郡、インドネシア国中央カリマンタン州Pulang Pisau県Sebangau Kuala郡、国内では三重県大台町、岩手県釜石市である。それぞれの地域において、社会経済状況および住民が自然環境の中心をなす森林をどのように意識しているのか、調査を行った。
「研究成果」
炭素クレジットを単に事業実施主体の収益とするだけでは、炭素吸収量を増加させるような森林施業に繋がらないことが解った。これは、地域住民がクレジットの概念を正確に理解できないこと、森林に対する所有の概念が曖昧なため、人為インパクトは所有者だけでなく地域住民も与えていることなどによる。そこで、所有権を森林と炭素で分離し、後者は地域コミュニティに与えるべきだという結論を得た。また、炭素クレジットという概念が新しいことから、その保全活動を効率的に行うには、住民に対するキャパシティビルディングを事前に実施する子余の重要性を明らかにした。
生物多様性についてはセーフガードやプロジェクトの適格性などで評価することはあっても、統合化した指標でクレジット化することはなかった。当研究では森林の持つ複数の環境保全機能を統合化した形でのクレジットの発行のための論点整理を行った。
クレジットを発行する場合の具体的な基準については、ベースライン方式、参照レベル方式が炭素クレジットでは用いられている。様々な自然生態系の機能を統合化する生態系サービスを前提としたクレジットの算定について、多次元空間での統合化方式の適用を試みたが、適切な回答を得ることはできなかった。
当研究の成果を用いて環境省の地球環境研究総合推進費に広島大、東大、京大と共に応募し、採択された。