表題番号:2013A-6349 日付:2014/04/12
研究課題複雑ネットワークを用いた仮想空間における社会ネットワーク構造の経済分析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 社会科学総合学術院 教授 土門 晃二
研究成果概要
 本研究では、応用数学の文献を読み「スモール・ワールド」の特徴(平均次数やベキ則など)の応用について考察を深めた。従来の応用数学の議論では、モデルの中でネットワークのつながり方のみが変数として扱われてきた。経済学的にはネットワークにつなげる個人合理性を、次数(ネットワークのつながる数)を変数とした効用関数で導くことが必要で、その方法について具体的な効用関数を用いて考察を行った。
背景になっている状況は、SNSやブログといった双方向のコミュニケーション・ツールで、モデルではランダムグラフを仮定している。具体的なユーザーの効用関数は、2つの要因によって規定され、一つは自分の情報をアップすること、もう一つは相手の情報を見ることである。この場合に、ネットワーク外部性が発生し、この二つの要因による外部性の大小によってネットワークが拡張するのか(参加者の増加)、縮小するのかを明らかにした。前者の要因による限界効用が後者のものよりも小さい場合に、ネットワークは拡張される。ただし、この帰結は特定の効用関数に依存しており、効用関数の一般化への拡張が必要とされ、本研究でその方向性をさらに探った。以上の考察はメモの段階であり、論文の公表には至っていない。近日中にまとめる予定である。
 また、本研究に関わる考察として、理論分析とは異なった制度研究も行った。日本の研究者の相互依存関係を研究論文および研究箇所の移動、学位取得箇所から明らかにし、国際的な比較を行った。研究者間の世界も一種の「スモール・ワールド」であり、その中で国際的に日本の研究体制は国内自己完結型であることを明らかにした。また、日本における各研究者の研究へのインセンティブ(ネットワークに例えれば情報のアップロード:論文の公表)は、引用回数や学術雑誌のインパクト・ファクターといった指標による短期的な評価基準(給与水準)よりも、長期的な評価にあることをデータで明らかにした。この考察は、英文学術雑誌で受理され掲載予定である。