表題番号:2013A-6341 日付:2014/04/11
研究課題機能性ポリマーナノコンポジット絶縁材料における高熱伝導性の向上
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 助手 飯塚 智徳
研究成果概要
研究目的:
ポリマーコンポジット材料における高熱伝導性の向上に向けたフィラー粒子添加効果を解明することと共に加工性向上のためフィラー粒子の低充填化を目的としている.

研究内容:
これまでに絶縁材料における高熱伝導率を数 [W/mk]程の値を得るにはフィラー粒子を高充填(80 vol%以上)する必要があった.ここでは,フィラー充填率の低充填化による熱伝導率の維持が可能かどうかの評価を行なった.

評価方法:
高熱伝導率の評価としてフィラー粒子充填率を従来の80 [vol%]から新たに60 [vol%]へと低充填とし,フィラー粒子の種類にはBN(板状,平均粒径 1.8 [μm],10.1 [μm],18.8 [μm]),MgO(球状,平均粒径 2 [μm],20 [μm]),Al2O3(球状,平均粒径 2.7 [μm],5 [μm],23 [μm])を用いた.ベース樹脂にはビスフェノールF型のエポキシ樹脂を用い,フィラー粒子とポリマーマトリックス間との結合を向上させるため,カップリング剤を用いた.熱伝導率測定にはレーザーフラッシュ法を用いた.

研究結果:
ベースとなるエポキシ樹脂そのものの熱伝導率は0.24 [W/mk]であり,これに各種フィラー粒子を充填することで,熱伝導率の特性付与が得られた.フィラー粒子の平均粒径が2 [μm]程度のものを60 [vol%]した結果,BN試料では3.63 [W/mk],MgO試料では3.58 [W/mk],Al2O3試料では4.98 [W/mk]ほどの熱伝導率の特性付与効果が得られた.また,フィラー粒子の平均粒径が20 [μm]付近のものでは,BN試料では6.23 [W/mk],MgO試料では4.94 [W/mk],Al2O3試料では3.68 [W/mk]となり,同様の特性付与効果を得ることが分かった.フィラー粒子の粒径を20 [μm]と1 [μm]を複合化させた試料では4.19 [W/mk]であった.

研究結果考察:
マイクロフィラーを60 [vol%]充填した試料において熱伝導率6 [W/mk]程度の特性付与を得ることができ,フィラー粒径2 [μm]付近のものでは,フィラーの形状による違いは見られなかった.しかし,フィラー粒径が20 [μm]付近と大きくなるにつれ,熱伝導率への付与効果に違いが分かり,球状フィラーよりも板状フィラーを用いることで試料内における熱伝導路を形成し易いことが分かった.また,試料の作製方法についてもフィラー粒子とポリマーとの界面をカップリング剤により結合を向上させることで,全ての試料において約1.5 [倍]の熱伝導率向上が得られ,全ての試料において試料内ボイド率を2 [%]以内に抑えることができた.しかしながら,これまでに高充填試料で得られた10 [W/mk]を達成するには今後さらなる改善が必要と考えられた.

まとめ:
本研究では,ポリマーナノコンポジット材料の熱伝導性の向上を評価し,ベースエポキシ試料にAl2O3,BN,MgO等の各フィラーの粒径や添加量を同一条件とし,コンポジット材料の作製方式の改良により,熱伝導率の向上(約1.5倍)や試料内ボイド率を全ての試料において2 [%]程度に抑制することができた.