表題番号:2013A-6331 日付:2014/04/11
研究課題ナノNi粒子とA1接合機構の解明と応力緩和構造の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 巽 宏平
研究成果概要
パワーデバイスにおけるダイボンディング部「素子裏面電極‐基板電極」あるいは、表面電極とCuリードの接合を想定したナノNi粒子のAlへの直接接合について、ナノNiペースト、ナノNi溶液を用いた接合評価をおこなった。Al蒸着Siチップ同士の接合実験で加熱・加圧を行うことにより十分な初期強度ならびに高温保管での強度が確保できることが分かった。さらにAl表面へのナノNi溶液の塗布方法として静電噴霧法は選択的に電極への塗布が可能であり、一定の強度が得られていることから、ナノ粒子の塗布方法として有効であると考えられる。
高融点材料で耐食性も期待できるNiを用いた接合が、低温300℃程度で可能であることが分かった。かつ接合後も300℃以上の高耐熱性を有していることが判明した。界面のSTEMによる観察からは、低温側では酸化物を介した接合が開始し、高温側ではAl/Niの金属結合が進行していることが確認された。パワーデバイス実装への適応において、銅基板とSiまたはSiCチップとの熱膨張差から生じる応力の緩和については、Niナノ粒子層に応力緩和層を用いることで十分なな接合強度が維持できることがわかった。さらに最適な応力緩和層の配置と物性の検討を有限要素法によるシミュレーションも併用して検討する予定である。
 またSiCダイオードチップを使用して、ダイボンディング部の「素子裏面電極―基板電極」の接合をナノNi粒子により行い、高温環境及び高温保持試験後において回路として正常に動作することを確認した。
以上の結果から、ナノNi粒子は塗布方法のさらなる検討が必要ではあるが、ダイボンディング部の高耐熱実装技術として実用的かつ有効な接合技術であると考えられる。
なお、粒子サイズによる接合強度の比較で、接合温度300℃では、粒子サイズの大きい方が接合強度が高くなる結果に対しては、小粒径の粒子では、表面の酸化膜量が相対的に多くなることが原因しているものと考えられた。このことから、表面活性を高めた小径のものと、酸化膜量を相対的に提言した大径の粒子複合化による最適なナノ接合材料の検討が必要と考えられる。