表題番号:2013A-6327 日付:2014/04/01
研究課題電気設備劣化検出手法の開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 犬島 浩
研究成果概要

電気設備劣化検出手法の開発
1.背景
電動機の絶縁劣化診断の一つの手法として、零相電流波形を高速フーリエ変換することで判定できることが分かっている。本研究では、絶縁劣化を含む構造的劣化評価できる信号処理法探索をめざす。特に最近の電動機はインバータ制御になっており、供給されている電源波形は正弦波に似せた波形となっており、従来の研究成果は十分に生かせない可能性がある。
電気設備は劣化すると、部分放電が発生する場合が多い。この場合、振動計などの零相電流計以外の信号を用いた劣化検出の可能性も探索する。このために、適当な帯域通過フィルタを設計する。
劣化診断のための信号処理法は個々の対象により、最適な処理法が存在すると想定される。このため、複数の処理法や、各処理法で使用するパラメータの探索も実施する。
2.方法
対象となる電気設備に設置されたセンサで観測された信号を、アナログ回路を用いて変動成分を抽出する。次にA/D変換し、統計モデル(例えば自己回帰モデル;ARモデル)を作成し、劣化判断する。
(1)測定する対象電気設備の物理量:振動など
(2)センサの選定:AEセンサ
(3)アナログ回路の設計:バンドパスフィルタと増幅器
(4)サンプリングレートの選定:
(5)信号処理の選定:連続ウェーブレット変換
本研究では、振動データを用いてウェーブレット変換による解析を行い、現在の診断手法よりも容易に実施が可能で損傷の判断が容易な診断手法を提案する。
3.結果
 ウェーブレット変換とは信号解析の手法の一つで、ウェーブレットと呼ばれる波形を拡大縮小(スケール)・平行移動(シフト)して信号と畳み込み演算を行い、相関の強さを表現する手法である。連続信号x(t)のウェーブレット変換は連続ウェーブレット変換(CWT)と呼ばれ、まずウェーブレットψ(t)を拡大縮小・平行移動をしてウェーブレット基底ψ_(a,b) (t)を作る。信号x(t)のウェーブレット変換x ̃(a,b)はウェーブレット基底を用いて定義される。ただし、a,bはそれぞれスケール,シフトパラメータと呼ばれる。
 劣化電動機と正常電動機に、連続ウェーブレット変換の特定スケールに違いが観測された。
4.結論
(1) 劣化電動機と正常電動機には、通常のスペクトル解析では検出できない変化が、連続ウェーブレット変換を用いることで、その特定スケールに差異が観測できた。
(2) 劣化判定には、多数の電動機を調査して、統計的に閾値を決定する必要がある。
(3) 劣化現象と判定指標の物理的関係を明確にする必要がある。