表題番号:2013A-6322 日付:2014/04/10
研究課題3次元超音波画像と胎児鏡面画像を用いた胎児の口と気道の検出法に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 大谷 淳
研究成果概要
 本研究では、胎児の先天的横隔膜ヘルニアの手術による治療法であるFETO (fetoscopic tracheal occlusion: 胎児鏡を利用する気管の閉塞)に有効と考えられる可撓性のある細い手術具を自律的に胎児の気道にナビゲートし、必要な施術を行う手術法の実現に資するいくつかの医用画像処理技術について検討した。また、内視鏡カメラが装着された手術具を内臓の内部に挿入しながら撮像される動画像を処理し、内臓の内部を3次元復元する方法を検討した。具体的には以下の通りである。
(1)楕円の検出
 超音波画像中の胎児の頭部に対応する楕円を検出するために、従来の反復的ランダム化ハフ変換を改良した準ランダムな方法を提案し、検討を行った。楕円の一部が遮蔽されている場合でも、従来法より高精度かつ高効率に楕円検出が行えることを実験的に示した。
(2)超音波画像からの胎児の顔の3次元検出
 3次元超音波画像中において胎児の顔の特徴点(鼻の頂点、両目の目尻、鼻の柱および上唇)間の幾何学的な関係に基づき、胎児の顔を検出するアルゴリズムを提案し、検討を行った。即ち、3次元超音波画像はノイズを多く含むので、3次元画像を構成する2次元のスライス画像ごとに(1)の楕円検出処理を施して胎児の頭部を抽出し、これに基づき顔の輪郭を求め、全てのスライス画像で求まった顔輪郭を統合して顔表面の3次元画像を得る。次に、このようにして得られた3次元顔画像の局所的な曲率と幾何学的な関係を利用して、目、鼻、口等の顔パーツを検出する。胎児ファントムを用いた実験により高い精度で顔の表面と顔パーツが検出できることを示した。
(3)内視鏡動画像を用いる内臓内部の3次元復元
 胃等の臓器の内部は、皺のような構造が随所に見られるため、内視鏡を動かしながら獲得される動画像からStructure from Motion (SFM)の原理で3次元復元をするための画像特徴点は豊富に存在すると言える。しかし、同じような皺構造の繰り返しが多数見られるため、対応付けが困難であるという課題もある。そこで本研究では、画像の縫い合わせ(stitching)を利用して、動画像におけるフレーム間の対応付けを安定に行う方法を提案した。即ち、SFMにより得られる3次元特徴点集合の縫い合わせを用いて密な3次元復元結果が得られるようにする。実験の結果、正確かつ効率的に3次元復元が行えることが確認できた。