表題番号:2013A-6320
日付:2014/04/05
研究課題高分散BaZnS:Mnナノ粒子による透明インキ作製と高性能薄膜の開発
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 理工学術院 | 教授 | 小林 正和 |
- 研究成果概要
- 再生可能なエネルギー源に関する研究開発が現在盛んに行われている。中でも太陽電池に関する研究は実用化に近付いており、社会においてニーズの高い重要な研究テーマである。
太陽電池デバイスの中でも単結晶Si太陽電池は、他の太陽電池に比べて寿命が長く太陽光の変換効率が高い。しかし、Si太陽電池の変換効率は約20%で理論限界値に近づいている。シリコン太陽電池の課題の一つに太陽光の高エネルギー成分である短波長成分を有効活用出来ていないことが挙げられる。本研究では、この短波長成分を蛍光体の利用により長波長光へ変換し太陽光エネルギーの利用効率を改善することについて注目した。特に波長変換材料には、蛍光効率の高い赤色蛍光体Ba2ZnS3:Mn (BZS)に注目した。この赤色蛍光体BZSをナノ粒子にし単結晶Si太陽電池の前面に配置することで、太陽光の長波長光を損失無くそのまま透過させ短波長光だけを変換することが期待出来る。従来の研究では、BZSを物理的粉砕法によりナノ粒子にし、スピンコート法を用いることで赤色蛍光ナノ粒子塗布膜を作製してきた。しかしこの赤色蛍光ナノ粒子塗布膜は、粉砕されたままのBZSナノ粒子の発光強度が劣化していることが原因で光学的特性が十分なものとは考えにくかった。そこで粉砕されたままのBZSナノ粒子の発光強度回復について検討を行った。粉砕によるダメージは真空中のアニール処理により回復させることに注目した。
アニール温度を1100℃まで上げるにつれ試料のX線回折信号測定の信号強度が強くなっていることから、BZSの結晶性が回復していることが確認出来た。また、1000,1100℃でアニール処理したBZSは従来のアニール処理のBZSと比較すると、131の回折強度が2.5倍になった。このことからBZSの結晶性が従来よりも良くなっていることが明らかになった。今回用いたアニール条件の範囲ではアニールを行ってもスペクトル形状への影響は確認されなかった。PLスペクトルのピーク値は630nmであり、半値幅は全て同じであった。また、従来のZnSを隣接しないアニール処理を施したBZSと比較して、蛍光強度が約8倍になった。アニール温度を1000℃まで上昇させると、それに伴ってPL強度は単調に増加した。そして1000℃以上ではでPL 強度の変化は、ほとんど無くなっていることも明らかになった。アニール温度が高温になるに従い、強い蛍光が観測されたのは高温のアニール処理により粒子表面に存在していた欠陥が回復されたためであると考えられる。