表題番号:2013A-6318 日付:2014/03/20
研究課題ドライアウトそしてDNBに適用できる汎用限界熱流束解析手法の構築
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 特任教授 師岡 愼一
研究成果概要
1.緒言
現在 世界で稼働している軽水炉型原子力発電所には、沸騰水型原子力発電所(BWR=Boiling Water Reactor)および加圧水型原子力発電所(PWR=Pressurized Water Reactor)があり、原子炉の炉心出力は、核燃料棒の表面が蒸気で覆われる熱流束(限界熱流束 CHF=Critical Heat Flux)で規定されている。PWR燃料では強制対流サブクール沸騰状態で、伝熱面が局部的に蒸気膜で覆われるDNB(Departure Nucleate Boiling)のメカニズムで発生しており、解析モデルは少なく、試験データをフィッティングした実験式が用いられている。BWR燃料の限界出力出力は燃料棒表面の液膜ドライアウトモデルで予想可能であることは、報告者らが報告している。本研究では、BWRと同様に液膜がドライアウトすることによるメカニズムからDNBの限界熱流束を予測できる限界熱流束解析手法を構築することである。特に、本研究の特徴として挙げられるのが,先行研究では行われていない現象論的予測モデルによる軸方向非一様加熱条件の解析を行っている点である。
2.解析手法の構築
 DNB 発生機構として,本研究では蒸気ブランケット機構と均質核生成機構の二つの機構を考えた。先行研究では、蒸気ブランケットと伝熱面の間に形成される薄液膜がドライアウトし伝熱面が蒸気で覆われるとDNBが発生しているという仮定のもとにCHFを評価していた。軸方向非一様加熱条件での試験結果と先行研究の解析を比較すると、DNB発生位置そして軸方向非一様加熱のCHFへの効果を評価することはできなかった。そこで、DNB発生時のロッド温度変化の試験結果を検討すると実現象では過渡的な温度変化を示していることがわかった、そこで、伝熱面の過熱現象を考慮した新しいモデルを構築した。
つまり、先行研究では液膜が消失した時点で CHF が発生すると考えられているが,本研究では蒸気ブランケット下の液膜が消失した後,壁温の時間変化を考え、壁温が限界液相過熱温度に到達した場合のみCHF が発生すると考えた。
3.結論
構築した解析手法と試験データとの比較より、以下の結論が得られた.
(1)先行研究では扱われていない,現象論的予測手法による軸方向非一様加熱条件における CHF および CHF 発生点予測手法を構築した.
(2)本解析手法の CHF 予測精度は,PWR の燃料設計等に実際に応用されている経験的相関式である W-3 Correlationの CHF 予測精度との比較から,現象論的手法としては十分妥当な精度であるといえる.
(3)本解析手法は従来の蒸気ブランケットモデルでは予測出来なかった軸方向非一様加熱条件における CHF 発生点を 20% の精度で予測可能であり,W-3 Correlation による CHF 発生点予測精度よりも良い精度で予測可能である.