表題番号:2013A-6313 日付:2014/04/07
研究課題学際的アプローチによる細胞極性制御メカニズムの解明
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 准教授 佐藤 政充
研究成果概要
 細胞が増殖・分化をおこなって組織を形成するにあたり、細胞の形態が重要な役割を担うことが一般的に知られている。細胞形態のなかでも、特に細胞が特定の方向に伸張する、いわゆる細胞の極性成長は、細胞の非対称分裂と分化、および3次元的にひろがっていく細胞の組織化において重要なファクターである。
 しかしながら、細胞がどのように成長する極性を作り出しているのか、その分子メカニズムについては未知の部分が多い。そこで我々は、細長い極性をもって成長する分裂酵母をモデル生物として用いて、細胞極性が確立される分子メカニズムの解明を目指している。
 多くの研究者がこの難題に取り組んだ成果として、これまでに100種類を超える「極性因子」が発見されており、これらの多くは、細胞が成長する末端に局在する性質を持つ(for review, Hachet et al., Curr Opin Cell Biol 2012)。我々は、これらの因子の中で、まずTea1とTea3という2つのタンパク質に注目した。Tea1もTea3も、通常の顕微鏡解析においては、細胞の末端に局在し、協調して働くと考えられていた(Mata and Nurse, Cell 1997; Arellano et al., Curr Biol. 2002)。
 しかしながら、我々は、ケンブリッジ大学Carazo-Salas博士らとの共同研究により、細胞の末端の方向から細胞を顕微鏡観察するイメージング技法を用いると、驚くべき事にTea1とTea3は末端においてドット状に存在するが、お互いのドットは必ずしも共局在しないことが分かった。また、Tea1とTea3を強制的に共局在させると、細胞の極性成長に欠陥が生じることが分かり、これらの因子は協調して働くのではなく、細胞末端で個別に機能することで細胞極性を確立していることが示された。このような、極性因子のドット状局在は、生物種を超えてみられる普遍の原理であると考えられ、細胞極性因子の局在と活性に全く新しい知見をもたらすことに成功した。