表題番号:2013A-6303 日付:2014/04/11
研究課題コラーゲンの糖化修飾と血管新生とのかかわりに関する分子科学的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 小出 隆規
研究成果概要
網膜色素上皮由来因子(Pigment epithelium-derived factor, PEDF)は網膜における主要な血管新生阻害因子として働く。また、PEDFはコラーゲン上のアミノ酸配列を特異的に認識して結合する。PEDFが認識するコラーゲン上の配列は、血管新生に関与することが知られている膜結合型ヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)結合配列、および高血糖によってadvanced glycation end products(AGEs)が生成する配列とも重複している。そこで本研究では、コラーゲンおよび、該当する領域を含むコラーゲン様3重らせんペプチドを人為的に糖化(AGE)化したものを作成し、それを用いてin vitroでPEDFおよびヘパリン(HSPGアナログ)との相互作用の解析を行うこととした。

①遺伝子組換えPEDFの作成
 大腸菌をホストとしてマウスPEDFをGST融合蛋白質として発現させた。GSTをプロテアーゼにて切断のち、ベンザミジンビーズにてプロテアーゼを除去した。得られた蛋白質は、コラーゲン結合活性およびヒト臍帯動脈内皮細胞(HUVEC)の遊走にたいして有意な阻害活性を示した。

②糖化コラーゲンの作成とその性質
コラーゲンを高濃度のグルコースとともに37℃で30日間インキュベートし、継時的にサンプルを回収した。日数経過とともに、SDS-PAGE上でコラーゲンalpha鎖に対応するバンドのシフトが観察された。また、3日経過後のコラーゲンは、in vitroでの細線維形成能をほとんど消失していた。

③糖化コラーゲン様ペプチドの作成
PEDF結合配列を含む3重らせん型ペプチドを化学合成し、②同様に糖化反応を行った。精製物を逆相HPLCにて単離精製に、MALDI-TOF質量分析にて構造を推定した。生成物の一つとしてカルボキシメチル基による修飾が存在することが分かった。

④PEDFおよびヘパリン結合性と糖化修飾との関係
上記、②および③にて調製した糖化コラーゲンおよびペプチドと、PEDFおよびヘパリンとの結合性をin vitroで調べた。総じて、糖化修飾は両者との結合に対して負に働く傾向がみられた。