表題番号:2013A-6294 日付:2014/06/11
研究課題新規遠隔不斉誘導反応によるグルタミン酸合成酵素阻害剤の合成研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 准教授 細川 誠二郎
研究成果概要
グルタミン酸合成酵素阻害剤TβLの合成研究を行った。これまで、不斉補助器を有するα-アミノ-α,β-不飽和イミドを用いて、α-ケト-β-ラクタムとの高立体選択的ビニロガス向山アルドール反応に成功し、そのアルドール付加体を用いてTβLの不斉合成を検討していた。しかしながら、α,β-不飽和イミドの二重結合の還元やα-アミノ基の保護基の除去が困難であり、全合成研究が難航していた。そこでまず、TβLの立体異性体混合物を合成し、光学分割により天然型のTβLを得ることとした。α-ケト-β-ラクタムにアリル基を導入した後、末端オレフィンをオゾン分解でアルデヒドへと変換し、α位に保護されたアミノ気の付いたHonor-Wadsworth-Emmons試薬と反応させることにより、保護基の付いたα-アミノ-α,β-不飽和エステルを合成した。この化合物に対し、NiCl2-NaBH4によって二重結合の還元した後、脱保護を行うことによってTβLの立体異性体混合物を得た。次にこれら異性体の光学分割を行った。NiCl2-NaBH4による二重結合の還元で得られた化合物を酸処理することにより、六員環ラクトンとしたところ、TLCにてシン体とアンチ体が区別されて観察された。これらのジアステレオマーをシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて分割し、ラセミ体のラクトンを得た。現在、HPLCによるラセミ体の光学分割を検討している。一方、α-ケト-β-ラクタムに対して、α位にメチル基やアミノ基を持たないシリルジエノールエーテル(新型不斉素子)を反応させたところ、これも高立体選択的に反応が進行することが確認された。現在、生成物の二重結合を還元し、α位へのアミノ基の導入を検討している。以上のように、ラセミ体のTβLの合成に成功したほか、新型不斉素子によって望みの反応が高立体選択的に進行することがわかった。現在、ラセミ体の光学分割と不斉合成を並行して行っている。