表題番号:2013A-6293 日付:2014/04/06
研究課題自己組織化によるシリカ-ペプチドナノ組織体の創製
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 准教授 下嶋 敦
研究成果概要
本研究課題では、生体分子であるアミノ酸やペプチドがSi-C結合を介してケイ素アルコキシドと連結した分子を設計し、その自己組織化・重合により新しいハイブリッド材料を創出することを目的としている。今回は、規則的な細孔を有するメソ多孔体をターゲットとした。シリカメソ多孔体を有機修飾することによって多様な機能を付与することができるが、特に、アミノ酸やペプチドによる細孔内修飾によって生体分子の吸着、キラル分離、酵素類似反応などへの応用が期待できる。本研究では、アミノ酸にトリアルコキシシリル(-Si(OR)3)基が連結された新規アルコキシシランを合成し、界面活性剤を鋳型として用いたアミノ酸修飾メソポーラスシリカの直接合成について検討した。
各種アミノ酸(グリシン (Gly)、アラニン (Ala)、フェニルアラニン (Phe)など)のエチルエステルと3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランとの反応により、尿素結合を介してトリエトキシシリル(TES)基が結合したTES-アミノ酸を合成した。TES-Glyについては、-COOH末端にもTES基を結合させた(TES-Gly-TES)。これらの分子をテトラエトキシシラン(Si(OEt)4)と様々なモル比(x : (1-x), x = 0-0.8)で混合し、カチオン性のアルキルトリメチルアンモニウムあるいは非イオン性界面活性剤の存在下、加水分解・縮重合させることによってメソ複合体を合成し、溶媒抽出によって界面活性剤の除去を行った。
TES-アミノ酸はいずれも無色透明の油状物質であったが、TES-Gly-TESは結晶性の固体であった。各分子の1H,13C,29Si NMR測定により、アミノ酸部位とTES基、さらに尿素結合に帰属されるシグナルが観測された。TES-Gly, TES-Ala, TES-Pheの添加量をx = 0.2として得られたメソ構造体は、XRD、TEMにより2Dヘキサゴナル構造をもつことがわかった。窒素吸着測定の結果、x = 0の場合と比較して細孔径が減少したものの、メソ孔を有することが確認された。IRスペクトルからは、シロキサン骨格による吸収ピークのほかに、アミノ酸由来のピークが観測され、xの増加にともなってその強度が増加した。以上の結果から、細孔表面がアミノ酸で修飾されたメソポーラスシリカの合成が確認できた。一方、TES-Gly-TESを用いた場合も同様に多孔体が得られたが、この場合、アミノ酸部位はシリカ骨格内に組み込まれていると予想された。