表題番号:2013A-6291 日付:2014/04/08
研究課題メソ構造を利用したアンカーリング界面の設計と金属薄膜の密着性評価
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 黒田 一幸
研究成果概要
本研究は、薄膜界面のメソ構造の設計およびメソスケールの構造が機械的特性に与える影響の調査を目的として行った。
1. メソポーラスシリカ薄膜の作製
筒状細孔が2次元的に並んだ2次元メソポーラスシリカ薄膜(2D-MPS)と球状細孔が3次元的に連結した3次元メソポーラスシリカ薄膜(3D-MPS)の2種類の薄膜を作製した。テトラエトキシシラン、界面活性剤、エタノール、水、塩酸を混合した最適なゾル前駆溶液を調製し、次にシリコン基板上へスピンコート法で成膜した。最後に、膜を焼成し界面活性剤を除去した。作製した薄膜をX線回折分析・走査型電子顕微鏡観察(SEM)を用いて構造を評価し、目的とする2次元メソポーラスシリカ薄膜(2D-MPS)と3次元メソポーラスシリカ薄膜(3D-MPS)の作製を確認した。
2. メソポーラスシリカ薄膜の表面処理
メソポーラスシリカ薄膜表面の大部分に存在する薄いシリカ層を除去するため、温和な化学エッチングを用い、そのエッチング条件を検討した。SEMによる表面の構造分析およびX線光電子分光分析による組成分析により、薄膜表面にオープンなメソ孔を露出させることに成功した(open2D-MPS, open3D-MPS)。
3. 表面メソ細孔への銅の導入と銅薄膜の作製
真空蒸着によりMPS上に銅薄膜を作製した。メソポーラスシリカ薄膜表面に露出したメソ孔内へ銅を導入するために、蒸着速度を検討した。2次元メソポーラスシリカ薄膜上に作製した銅薄膜の場合(Cu/open2D-MPS)、SEMを用いた剥離させた銅側の表面観察により、2次元メソポーラスシリカ薄膜の表面メソ孔内へ銅が導入されたことを確認した。
4. 銅薄膜の密着性評価
 2次元メソポーラスシリカ薄膜の場合、銅のメソ孔への入り込みが確認できたので、2次元メソポーラスシリカ薄膜を用いた場合(Cu/open2D-MPS)において、Pull-off テストを用いて、銅薄膜の密着試験を行った。メソ細孔を持たないデンスなシリカ薄膜上に作製した銅薄膜の場合と比較したところ、2次元メソポーラスシリカ薄膜を用いた場合(Cu/open2D-MPS)、密着性が向上した。以上から、メソスケールのアンカーリング界面が密着性に影響を及ぼすことが示唆された。