表題番号:2013A-6275 日付:2014/04/09
研究課題CO2 分離回収用セラミックス吸収材の吸放出挙動の解明と性能向上のための材料設計
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 中垣 隆雄
研究成果概要
分散電源から排出されるCO2の大気への放散回避のため,一時貯留媒体として最適な固体の吸収材を組み合わせるCO2分離回収技術の確立を目指している.CO2吸収材には,600℃付近で吸収,700℃以上で放出して繰返し使用可能なセラミックス吸収材Li4SiO4(lithium ortho-silicate, 以下LS)を用いるが,実用的な充填層反応器の設計と性能評価のためには,大きな発熱を伴うLS充填層内の反応と熱流動現象を詳細に解明することが必要である.吸放出速度はCO2濃度,温度およびCO2貯蓄量に依存して非定常に変化する複雑な現象であることが分かっており,その物質輸送と反応に起因する挙動は,気相境膜の物質輸送と吸収済みの生成物層内への拡散を経た未反応層との界面付近で反応している可能性が高く,未反応核モデルによるシミュレーションによれば生成物層の物質輸送抵抗を緩和すれば,時間とともに低下する吸収速度を高く維持し,分離回収の性能向上が望める可能性がある.本研究ではさらに,①未反応核モデルで乖離の大きい条件での予測精度を向上させるべく,未反応核モデルにおいて,多孔質体の空隙率を代表値とした吸収による構造変化を吸収の前後で線形補間したモデルで表現して計算した.また,発熱による温度分布を考慮した非等温モデルとして粒子単体のエネルギー保存式も連成して計算した.その結果,Bi数が小さく熱分散は迅速であり温度分布はほぼ無視できるため,エネルギー保存式の連成では乖離の縮小には至らなかったが,空隙率のモデル化では実験結果を良好にトレースした.一方,反応と拡散の並進を考慮したモデルで吸収のフラックス分布を汎関数とした変分法のコードも作成し,計算した結果では未反応核によるモデリングは高濃度域ではやや実現象と解離している可能性があることがわかった.②物質輸送抵抗緩和のため,新形状の吸収材を設計し,成型して試験を実施する予定であったが,予算不足で未達である.本研究を基に,科学研究費補助金基盤(C)がとれたため,引き続き研究を遂行する.(例えば丸棒のように半径方向に対する長手方向のアスペクト比が極端に大きい形状など)